微分積分 2019-06-02

偏微分

ScienceTime Team
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偏微分

Introduction

ここでは,物理を学ぶ上では必須となる,偏微分について,図を用いてわかりやすく解説する。 決して難しい概念ではないため,構えずにリラックスして読んでもらいたい。

微分の復習

微分の基礎』で説明したように,変数xが増加したときの関数f(x)の増分は

(1)df=dfdxdx

と書かれた。ここで

(2)ddxf(x)=limΔx0f(x+Δx)f(x)Δx

である。


偏微分

では,xyという2変数の関数f(x,y)の場合はどうか。このような関数の変化は

(3)df=fxdx+fydy

と書かれる。このように,1次までの近似(dxdyの2乗の大きさ以降を無視する近似)で変化分を表したのを,全微分という。ここでdxの係数は

(4)xf(x,y)limΔx0f(x+Δx,y)f(x,y)Δx

で定義され,関数fxに関する偏導関数と呼ばれる。 また,偏導関数を求める操作を偏微分という。 このとき,変数yは固定した定数として扱われる。dyの係数も同様に

(5)yf(x,y)limΔy0f(x,y+Δy)f(x,y)Δy

で,xを固定したfの導関数であり,yに関する偏導関数と呼ばれる。 (3)のイメージは,以下の図1を参照。


図1:全微分のイメージ。(f(x,y)/y)(f(x+Δx,y)/y)の置き換えについては,文末を参照。

具体的な関数において,一方の変数を固定するということをイメージするには,図2を見てもらいたい。 図ではf(x,y)=x2y2という関数について,y=y0を固定したときの,x方向のfの傾きを表している。この例から,xを固定した場合や,別の形の関数の場合もイメージしやすくなるだろう。


図2:他の変数を固定して微分するということのイメージ

偏微分のこれらの議論は,変数が2つの場合だけではなく,任意の個数の場合にも一般化される。独立変数が(x1,...xn)n個ある場合,(3)に対応する式は

(6)df=fx1dx1+fx2dx2+...+fxndxn=i=1nfxidxi

となる。


表記

偏微分の表記として,

(7)(f(x,y)x)y

のように,固定する変数を明示されることもある。特に,独立変数の取り方が自明でない場合などには,このような表記がなされることが多い。

また,省略形として

fx=fx,(8)fxx=2fx2,fxy=2fxy

などが用いられることもある。二つ目以降は二階の偏微分であり,最後の例はxおよびyでそれぞれ他の変数を固定しながら微分するという意味である。


例題

最後に,いくつか例題を示そう。

Q. f(x,y)=x2y2xで偏微分してみよう。

A.

xf(x,y)=x(x2)x(y2)=2x


Q. f(x,y)=x2yxおよびyで順に偏微分してみよう。

A.

x(x2y)=2xy2xy(x2y)=y(2xy)=2x


Q. 最後に,図1にある

(9)f(x,y)yf(x+Δx,y)y

の正当性を示そう。


A. これらの二つの関数の差を取ると

f(x+Δx,y)yf(x,y)y=2f(x,y)xyΔx

となり,Δx0の極限で

f(x+Δx,y)ydy=f(x,y)ydy+2f(x,y)xydydx

と微小量の2次の違いしかなくなるため,1次近似(3)に入れたとき,(9)の間で置き換えが可能になる。