微分積分 2020-06-21

面積分・体積分

ScienceTime Team
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面積分・体積分

Introduction

ここでは,図形の面積や体積を求める積分方法と,関数の面積分・体積分について解説する。

面積計算

面積要素

任意の曲線の長さlは,N個の微小な線分Δli, (i=1,2,...,N)に分割して

(1)i=1NΔli

と,和を取り,分割数を無限にする極限Nを取ることで

(2)l=limNi=1NΔli=dl

と求められるのであった(『線積分』参照)。 同様の考え方により,平面上の任意の面積Sが,微小な面積ΔSiを用いて

(3)i=1NΔSi

とし,分割数を無限にする極限により

(4)S=limNi=1NΔSi=SdS

と求められる。 このdS面積要素(surface element)という。

容易な例として,直線直交座標系を取り,原点からx軸方向に長さay軸方向に長さbを持つ長方形の面積の計算を考えてみる。 このとき,面積要素はdxdyと表せるから総面積は

(5)0bdy0adx=a0bdy=ab

と計算できる。


極座標と円や球の表面積

今度は円の面積を考えてみよう。 この例では,直線直交座標系を取るのではなく,極座標(polar coordinates)と呼ばれる別の座標を選択したほうが計算が楽になる。 位置(x,y)は,原点からの距離rと偏角θを用いて

(6)x=rcosθ(7)y=rsinθ

で表せるから,(r,θ)によって位置を指定することもできる(三角関数の復習はコチラから)。 この変数の組を平面極座標という。 直線直交座標系とは異なり,この座標系での面積要素は,単に独立変数の微小量の積drdθとはならない(そもそもθは無次元なのでdrdθは面積の次元になっていない)。

正しい面積要素は以下のように求められる。 半径rの円は,r方向,θ方向に分割すると,図1の点ABCDで囲まれたような図形の集まりに分けられる。 孤CDの長さは(r+Δr)Δθであり,これにΔrをかけたものはΔr(r+Δr)Δθとなる。 そのため,ΔrΔθを微小に取った場合,孤ABの長さrΔθに幅Δrをかけたものとの差はΔの3次の量となり,無視できる。 すなわち,面ABCDの面積は底辺Δr,高さrΔθの長方形の面積で近似できる。 この面積は,図中に青色で示した長方形の面積に対応する。

図1:平面極座標における面積要素のイメージ

よって,ΔrΔθをそれぞれ無限小にとってやれば,平面極座標系での面積要素が

(8)dS=rdrdθ

と得られる。 一般的な説明は別でするが,ここで(8)にdrdθとの差異として含まれるrは,座標変換一般の文脈でJacobianと呼ばれる量に対応する。 (8)を用いると,円の面積が直ちに

(9)0rrdr02πdθ=r22×2π=πr2

と得られる。

この手法は平面だけでなく,3次元中の曲面の計算にも用いることができる。 例として,球の表面積を求めてみよう。 この場合も,座標は極座標を用いるのが都合がいい。 3次元では,位置(x,y,z)はもう1つ角度変数ϕを追加して

(10)x=rsinθcosϕ(11)y=rsinθsinϕ(12)z=rcosθ

で指定できる(図2左)。 このとき,球の面積要素は

(13)dS=r2sinθdθdϕ

で与えられる(図2右)。

図2:直線直交座標(x,y,z)と3次元極座標との対応(左)および3次元極座標における面積要素のイメージ

これを,θ方向に0からπϕ方向に0から2πまで積分する。

(14)S=r20πsinθdθ02πdϕ

ϕについての積分からはそのまま2πが得られ,θについての積分は

(15)0πsinθdθ=cosθ|0π=2

となるから,半径rの球の表面積が

(16)S=4πr2

と得られる。


体積計算

前節の議論は,3次元空間中の体積計算にも拡張できる。 (4)に対応するのは,求める体積をVとすると

(17)V=limNi=1NΔVi=VdV

となる。面積分における面積要素に対応する微小体積dV体積要素(volume element)と呼ばれる。

例として今度は球の体積を求めてみる。 体積要素は球の面積要素(13)に厚みdrを持たせて

(18)r2drsinθdθdϕ

とできる。 これを積分したものは,(16)をr方向に積分したものに等しく,半径rの球の体積が

(19)V=4πr2dr=43πr3

と求まる。


面積分・体積分

ここまでの考えを利用すると,ある関数fの面Sおよび積分Vに渡る積分をそれぞれ

(20)SfdS

および

(21)VfdV

で計算することができる。 これらをそれぞれ,関数f面積分(surface integral)および体積分(volume integral)という。

また,面から流出(または流入)するエネルギーや物質の量を計算したい時など,方向を含めた積分値が知りたい時もある。 その場合,計算したいベクトル量をA,面と垂直で外向きの単位ベクトルをnとすると,求める量は

(22)SAndS

で計算できる。 あるいはこの方向の情報を面積要素に含めてdS=ndSとし

(23)SAdS

と表すこともできる。


面積分の例

面積分の例として,次のような問題を考えてみる。

Q. 半径aの円盤上に電荷が面密度(単位面積当たりの密度)σで一様に分布しているとき,円盤中心上で面から垂直にz離れた位置でのスカラーポテンシャルを求めよ(下図参照)。

A. 円盤中心からの径座標をρとすると,(8)より,微小面積ds上の電荷はσρdρdθであるため,その微小面から受けるポテンシャルは

(24)σ4πϵ0ρdρdθr

とおける。 これをρθについて積分したものが求める答えだ。

まずこの中にθそれ自体以外にθに依存する量はないため,θ積分は容易に実行できて

(25)σ4πϵ00aρdρr02πdθ=σ4πϵ02πρdρr

となる。 残るのはρについての積分だが,三平方の定理よりr=z2+ρ2であるから積分は

(26)σ4πϵ00a2πρdρz2+ρ2

と変形できる。 ここで

(27)ddρ(z2+ρ2)1/2=12(z2+ρ2)1/2ddρρ2=ρz2+ρ2

を用いるとρ積分はスムーズに実行でき

(28)ϕ=σ4πϵ00a2πρdρz2+ρ2=σ2ϵ0(z2+a2z)

と答えが得られる。