中性子星について説明する。
中性子星とは,太陽の2倍ほどの質量を持つ,主に中性子から成る天体である。質量は太陽質量の数倍もある一方で,半径はせいぜい10km程度しかないため,密度は太陽の$10^{14}$倍ほどにもなる。この途方もない密度をわかりやすく表すために「ティースプーン一杯で,数億トンにもなる」などの例えがしばしばなされる。
恒星は,自身の重力によって収縮しようとする一方で,内部の核融合反応によるエネルギーなどでつり合いを保っているが,反応が進み,コアが(核融合燃料にならない)鉄で満たされるようになっていくと,重力に耐えられなくなって収縮する。これを重力崩壊という。
重力崩壊が起こると,コアの密度が増加して,鉄は陽子と中性子に分解され,電子は陽子に捕らえられて中性子とニュートリノになる。中性子はフェルミオンであるため,複数の中性子が同じ状態を占めることができず縮退を起こす。このときに生じる圧力(縮退圧)によって重力とつり合いをとることで,中性子星が形成される。しかし,これ以上大きな質量を持つ天体ではコアの収縮を止めることができず,密度が発散してブラックホールとなる。
また,重力崩壊の際に,外側から降りそそぐ物質が中性子星の表面でバウンスするときの衝撃が伝播し,外層を吹き飛ばす。これを,超新星爆発という。このとき,ニュートリノが衝撃波の成長に重要な役割を果たしていると考えられているが,詳細については未だ議論があるようである。
角運動量保存より,収縮した中性子星は高速回転を始める。また強い磁場が原因で磁極からビームが放射されるが,中性子星の自転の軸と磁場の軸が一致していない場合,ビームの方向は回転する。これにより,地球からはビームが規則的に点滅する光に見える。このように,点滅する光(パルス)を放つように見える天体をパルサー(pulsar)と呼ぶ。
NASAのチャンドラX線観測衛星によって撮影された,ほ座パルサー(Vela Pulsar)— 美しき物理学bot (@ST_phys_bot) June 15, 2019
ほ座パルサーは,約1000光年かなたにある中性子星パルサーで,1秒に11回という速さで回転しており,荷電粒子を光速の70%の速さで噴出している。 pic.twitter.com/UVBVtBD3nU