なぜ一部の記者は悲しみにくれる犯罪事件の遺族の心に土足で入り込めるのか?
なぜ一部の弁護士は明確な証拠のある凶悪犯罪者を弁護するために、狡猾な議論を行うことができるのか?
なぜ一部の外科医は冷静に人体にメスを入れることができるのか?
すべてでは決してないが、これらの問いに対する適切な答えが「彼らがサイコパスであるから」というものであることも珍しくないかもしれない。
サイコパスとは、他者への共感能力を欠き、罪悪感を感じることが出来ない人格障害者のことだ。彼らは良心を持たないため、平気でうそをつき、他人を操り、自分の利益のために利用しようとする。またそれに加え、目先の利益にとらわれ、恐怖心を感じず、リスクを顧みないため、自ら破滅の道を辿ることも多い。
当然の結果として、彼らは犯罪に手を染めることが多く、凶悪な罪を犯す危険性も通常より高い。一方で、これらの特徴は特定の社会的役割を果たすうえでのアドバンテージになることも珍しくなく、社会的な成功者もまた少なくない。
そんなサイコパスの研究を専門にするイギリスの心理学者ケヴィン・ダットン(Kevin Dutton)は、著書『サイコパス 秘められた能力』において、サイコパスが多い職業を紹介している。そのトップ10が以下の通りだ。
これらの職業の多くに共通するのは、共感能力を欠いていることが職務を全うする上でアドバンテージになるということと、人を支配する力を持つことが出来るということだ。
共感能力の欠如については、私情を脇にやるべき場面が多い警察を含めた公務員や、弁護士などがわかりやすいだろう。自分にとって有利な判断を導くためには手段をいとわないという性質も適している。また、絶対的な力という点につては、狭い調理場であっても同じなようである。
イギリスでは2014年に公開された内務省の資料から、核爆弾が投下され国が著しい被害を被った際、秩序の回復のためにサイコパスを指導者とすべきという指針が東西冷戦の最中に策定されていたこともわかっている。この指針も、上述のサイコパスの特性を考慮してのものだ。
サイコパスが警察という職業に惹かれる別の理由は、職務に伴うスリルもあるだろう。ジャーナリストやセールスパーソンは相手の心情を無視できるがために全うできる内容もある。
聖職者にサイコパスが多い理由として元FBIのジョー・ナヴァッロ(Joe Navarro)は宗教団体は他者を搾取する理由と正当性を与えるためではないかと説明している。
このように、サイコパスは凶悪犯罪者だけではなく、身近なところにも当たり前に存在しているし、社会的な影響力の強い役職を務めていることも珍しくない。この事実を無視して人間社会の構造を正しく分析することはできない。
このことについて、それぞれいろいろと思うことが多いだろうが、サイコパスの存在とその特性を正しく理解し、どのように対処することが、サイコパス自身にとっても、社会全体にとっても良いことなのか、真剣に考えて行かないといけないだろう。
その他参考:
サイコパス 人格障害 心理学 犯罪