気候変動と女性差別

Dr. SSS 2019/12/17 - 21:27:19 環境
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17日、世界経済フォーラム(WEF)によるジェンダー・ギャップ指数の最新版が発表された。日本はその結果、153か国中過去最低の121位となった。

ジェンダー格差や差別の問題は、国際化社会において今や国際問題の一つである。先日のCOP25で気候変動危機への意識の低さを指摘された日本であるが、国際的な問題が取り上げられるたびに、日本の社会正義への圧倒的な意識の低さが浮き彫りになる。

だがそんな日本でこそ、これらの問題の背景には、ある共通の要因があることを認識しておかなければならない。

ジェンダー格差の問題と気候変動の問題は、それぞれ必ずしも独立なものではなく、互いに密接なつながりがあることを指摘されているのだ。


気候変動と女性差別

ジェンダー問題と気候変動問題の関連として真っ先に思い浮かぶことは、気候変動危機を訴えるスウェーデンの活動家グレタ・トゥーンベリや、米国民主党の議員AOCことアレクサンドリア・オカシオ=コルテス への性差別を含んだ不当な中傷だろう。

フィナンシャル・タイムズのコラム『なぜ中年男性はグレタ・トゥーンベリを嫌うのか』は日本でも紹介されたが、一つの理由は彼女がまだ子供であることに加え、彼女が女性であることだと言われている。つまり、彼女が男の子だったら、ここまでひどい憎悪や中傷は向けられなかっただろうと。

だがこの背景には、トゥーンベリ氏が女性であるとか子供であるとかいうことに加え、もう一つの心理的理由があるのかもしれない。

女性差別の背景には伝統的な男性社会の変化を恐れる保守的な心理があるといわれているが、科学的根拠を前にしても、リベラルと比較して、保守主義者ほど極端に気候変動を否定することと、気候変動否定そのものに保守的なジェンダー観との関連がある可能性が示されている。

ある研究によると、気候変動否定論者は男性が覇権を握る古風な工業的かつ資本主義的社会様式に固執する傾向にあるという。

また、男性より女性の方が人為的な気候変動を示す科学的根拠に同意し、その認識を生活スタイルの変化に反映させる割合が高い一方で、ある別の研究では、一部の男性は、リサイクルやエコバッグの利用などを、外向きの男らしさを気にして避ける傾向にあることが示されている。

この種の「古風な男らしさ」への固執は、「トキシック・マスキュリニティ(toxic masculinity)」すなわち「有毒なまでの男らしさへの執着」とも呼ばれる。

気候変動の主要な原因は畜産であり、畜産の撤廃、あるいは少なくとも大幅な縮小が壊滅的な気候変動を回避するうえで必須であることは、科学者たちによって何年も前から指摘されてきたことであるが、先日発表された1,1000人以上の科学者による気候変動危機を訴える宣言でも、畜産の縮小が絶対的に重要であることが明記された。

だが、アニマルライツの意識と気候変動への懸念両方から、動物の解放を訴える運動を牽引してきたのも主に女性であり、動物搾取の正当化固執もまた、トキシック・マスキュリニティと関連していることが指摘されてきた。

つまり、トキシック・マスキュリニティに染まり、元々女性や子供に問題を指摘されることに耐えられない差別的な保守的男性にとって、環境問題を指摘され、生活スタイルの変化を要求されることは益々耐えがたいことなのだ。


二重の被害者

気候変動による女性特有の被害は、気候変動問題を訴えることで、益々性差別的抑圧の被害にあうことだけではない。気候変動の悪化によるヒトへの悪影響は、男性より女性の方が大きい可能性が複数の観点から指摘されている。

一つは、ジェンダー間の格差が大きく、与えられる教育や権力の度合いが男性より著しく低い途上国の女性たちが従事する主な仕事は、気候変動によって大きな影響を受ける農業であるが、それらの国では女性の職業選択の自由が小さく、代替となる生活手段を見出す機会も与えられていない場合が多い。

また、気候変動により資源がさらに制限された場合、覇権を握る男性に資源が優先されることや、疫病や過酷な気候によって子育ての重圧が増加することなど、他にもいくつも原因となりうる要素が指摘されている。

すなわち、気候変動対策を訴える女性の口を塞ぐ行為は、気候レベルで女性たちをさらなる抑圧に晒すことにもつながりかねないのである。


私たちのすべきこと

壊滅的な気候変動を避けるために、個人でできる最も効果的なアクションは、肉や乳製品の消費をやめること、そして子供を作らないことである。そして、動物の搾取については先に述べたとおりであるが、出生率のコントロールにとっても、女性の地位向上は決定的に重要である。

人為的気候変動の主要な原因が、畜産と人口爆発であることを考えれば、気候変動そのものの原因が、トキシック・マスキュリニティに基づく女性差別であるとすら言えるかもしれない。

そのことを考慮すればなおさら、私たちにすべきことは何かが明確になる。保守的な男性の喚きに耳を傾ける必要はない。私たちのすべきことをしよう。

あなたが女性であれ男性であれ、様々な国際問題を解決するために私たちにできる最も有効かつ必須なアクションの一つは、女性の地位向上をサポートすることなのだ。

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