群論 2021-07-17

SU(2)のLie代数と既約表現

ScienceTime Team
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$SU(2)$のLie代数と既約表現

Introduction

ここでは,2次の特殊ユニタリ群SU(2)のLie代数について考える。 これは,特殊線形群のうち,ユニタリ行列からなる群のこと,すなわち2×2のユニタリ行列で,行列式が1であるものの集合

(1)SU(2)={UM(2,C) | detU=1, UU=UU=1}

のことである(M(2,C)は2次の複素正方行列の集合)。

自由度

2×2の複素行列は,2×2=4つの成分を持ち,各成分が複素数であるためその倍4×2=8の自由度がある。 しかし,ユニタリ条件

(2)UU=UU=1

が成分1つずつに条件を課すから,自由度は84=4に減る。 さらに,detU=1の条件が自由度を1つ減らすから,結局SU(2)の自由度は41=3となる。

行列U

(3)U=eiX=eii=13tiXi

と表すと,(2)より

(4)X=X

となる。 すなわち,ユニタリ群の生成元はエルミートである。

また,SUの場合は

(5)detU=exp[tr(iX)]=1

より,Xがトレースレスである条件

(6)tr(X)=0

が加わる。


Lie代数

上述の条件を満たす生成子の基底として

(7)Xi=Ji=12σi, (i=1,2,3)

が選べる。 ここで

(8)σ1=(0110), σ2=(0ii0), σ3=(1001)

であり,交換関係は

(9)[Ji,Jj]=ikϵijkJk

となる。


Cartan部分代数

(9)より,g=su(2)の可換な元はJiそれ自身のみであるから,Cartan部分代数の階数は1になる。 これをH=J3と選ぼう。 すなわち,h={J3}である。

このとき,(9)よりH=J3の随伴表現は

(10)ad(J3)=(0i0i00000)

で与えられ,固有方程式は

(11)det(ad(J3)αI)=α(α21)=0

となるから,ウェイトはα=±1となる。 このようにhも1次元になるが,便宜のために添え字をつけてα3と表すようにしよう。

±α3に対応する固有ベクトルE±αはそれぞれ

(12)E±=12(J1±iJ2)

によって構成できる。 これらは交換関係

(13)[J3,J±]=±J±,[E+,E]=J32

を満たす。 ここで

(14)J±2E±

と規格化しなおせば,標準基底の交換関係

(15)[J3,J±]=±J±,[J+,J]=J3

を満たすようにできる。


最高ウェイト

関係

(16)2(αi,μj)(αi,αi)=δij

を用いて基本ウェイトを求めよう。 今のケースでは1成分しかないから,対応する式は

(17)2(α3,μ3)(α3,α3)=1

である。

Cartan計量は

(18)g33=tr(ad(J3)ad(J3))=tr(100010000)=2

と求められるから,この逆は

(19)g33=(g33)1=12

となり

(20)(α3,α3)=g33α3α3=12

とわかる。

これより

(21)2(μ,α)(α,α)=2g33μ3α3g33α3α3=2α3μ3=1

であるから,基本ウェイトμ3

(22)μ3=12

と求まる。

すなわち,基本表現の最高ウェイトは1/2であり,任意の最高ウェイトはこれに0以上の整数をかけたものであるから,それをjと記すと,jの値は

(23)j=n/2, n=0,1,2,3,...

に限られる。

基本表現n=1(j=1/2)の場合は最高ウェイトに対応する状態|jに下降演算子Jを1回作用すると最低ウェイトj1=1/2が得られて,n=2(j=1)の場合は2回作用することでj2=1が得られる。 すなわち,一般に最高ウェイト状態にJn回作用すると,最低ウェイトjn=jが得られる。 これよりウェイトの総数が2j+1個であるとわかり,この数が既約表現の次元となる。


昇降演算子の行列要素

今考えているケースでは,昇降演算

(24)J±|m=2N±α3,m|m±1

に現れる係数,すなわち昇降演算子J±の行列要素Nα3,mを与える公式

(25)|Nα3,m|2=p(q+1)(α3,α3)2=14p(q+1)

であり

(26)m+pα3=j, mqα3=j

より

(27)|Nα3,m|2=14(jm)(j+m+1)

である。

References

  • Arvanitogeōrgos, A. (2003). An Introduction to Lie groups and the Geometry of Homogeneous Spaces. American Mathematical Society.
  • Bincer, A. M. (2013). Lie Groups and Lie Algebras: A Physicist's Perspective. Oxford University Press.
  • Das, A., & Okubo, S. (2014). Lie Groups and Lie Algebras for Physicists. World Scientific.
  • Georgi, H. (2018). Lie Algebras in Particle Physics: From Isospin to Unified Theories. CRC Press.
  • Knapp, A. W. (1996). Lie groups beyond an introduction. Birkhäuser.
  • 佐藤 肇. (2000). リー代数入門: 線形代数の続編として. 裳華房.
  • 島和久. (1981). 連続群とその表現. 岩波書店.