複素数の基礎

Dr. SSS 2020/06/08 - 10:02:14 4743 複素解析
はじめに

ここでは,複素解析を学ぶ上で必要となる複素数に関する最も基本的な知識を提示する。


keywords: 三角関数, 高校数学, Leonhard Euler, Eulerの公式, 数学, 複素解析

内容

複素数とは

$i^2=-1$を満たす数$i=\sqrt {-1}$を虚数単位(imaginary unit)と呼ぶ。 この$i$と,2つの実数$x$と$y$を用いて表される数

\begin{align} z=x+iy \end{align}

複素数(complex number)と呼ぶ。 この$x$を複素数$z$の実部(real part),$y$を虚部(imaginary part)と呼び,それぞれ

\begin{align} x = & \ {\rm Re}(z) \\ y = & \ {\rm Im}(z) \end{align}

のようにも表す。


複素共役と絶対値

複素数$z=x+iy$に対して,虚部の符号を変え

\begin{align} \label {cc} z^* =x-iy \end{align}

とする操作を,$z$の複素共役(complex conjugate)と呼ぶ。 (\ref{cc})と同じものを,アスタリスク$*$の代わりにバーを使って$\bar{z}$と表すこともある。 $z$の絶対値は

\begin{align} |z|=\sqrt{x^2+y^2} \end{align}

で定義される。 複素数の絶対値は実数であることに注意しておこう。 $z$と$z^*$の積を取ると

\begin{equation} \begin{split} zz^*=z^*z=&(x+iy)(x-iy) \\ =& x^2 +ixy -ixy +y^2 \\ =& x^2+y^2 \\ =& |z|^2 \end{split} \end{equation}

となり,絶対値の2乗が与えられることがわかる。




複素平面と極形式

複素数

\begin{align} z=x+iy \end{align}

を,$xy$平面上の点$(x,y)$に対応させる。 このように構成される平面を,複素平面(complex plane)という(図1)。

図1:複素平面。点$P=(x,y)$が,複素数$z=x+iy$に対応する。

原点$O$から点$P=(x,y)$までの長さ$r=|z|$と,$x$軸と線分$OP$がなす角$\theta$を用いると

\begin{align} x=r \cos{\theta},\ y=r \sin{\theta} \end{align}

であるから

\begin{align} \label {polar_form} z=r ( \cos{\theta}+i \sin{\theta}) \end{align}

と表すこともできる(三角関数についてはコチラを参照)。 この表し方を,$z$の極形式(polar form)という(図2)。

図2:絶対値$r=|z|$と,偏角$\theta$を用いた表示


Eulerの公式

さて,最後に微分のおさらいとして,(\ref{polar_form})を$\theta$で微分してみよう。 三角関数の微分の項で示されているように

\begin{align} \frac{d}{d \theta} \cos{\theta}=&-\sin{\theta}, \notag \\ \label {dcos_dsin} \frac{d}{d \theta} \sin{\theta}=&\cos{\theta} \end{align}

であったから

\begin{align} \label {dz} \frac{dz}{d\theta}= r ( -\sin{\theta}+i \cos{\theta})=iz \end{align}

となる。 (\ref{dcos_dsin})を用いて再びこれを微分すると

\begin{align} \label {ddz} \frac{d^2z}{d\theta^2}= -r ( \cos{\theta}+i \sin{\theta}) =-z \end{align}

となる。 微分方程式(\ref{dz})と(\ref{ddz})を満たす解は

\begin{align} \label {ei} z= re^{i\theta} \end{align}

となる。 これが正しい解であることは,指数関数$e^{ax}$の性質

\begin{align} \frac{d}{dx}e^{ax} =ae^{ax} \end{align}

を用い,(\ref{dz})と(\ref{ddz})の左辺に実際に代入して確かめられる。 (\ref{polar_form})と(\ref{ei})を比べることで

\begin{align} \label {euler} e^{i\theta}=\cos{\theta}+i \sin{\theta} \end{align}

が成り立つことがわかる。 これを,Eulerの公式(Euler's formula)という。

ちなみに,(\ref{ei})に$\theta=\pi$を入れると

\begin{align} e^{i\pi}=-1 \end{align}

というよく知れた等式が得られる。 Eulerの公式の別の導出法はコチラから。



参考文献