情報理論の発達とともに,物理学者たちは,情報と物理的宇宙との関係について関心を深めてきた。

イギリスのポーツマス大学のメルビン・ヴォプソン(Melvin Vopson)は,AIP Advancesに掲載された研究で,シャノンの情報理論に基づき,観測可能な宇宙に存在するすべてのバリオン(陽子や中性子など)にどれだけの情報がエンコードされているかを推定した。

その結果,6×1080(6の後に0が80個並ぶ)ビットという値が得られた。

この推定は,ボゾン(光子やヒッグス粒子など)は情報を保持するのではなく伝達するための粒子であるとの仮定から,不安定な粒子や反粒子はその寿命の短さから値に寄与しないとの仮定から,計算から除外するなど,いくつかの仮定に基づいている。

最近の研究では,情報がブラックホールからどのように出ていくのかなど,情報と物理の相互作用の理解が深まってきているが,情報の正確な物理的意義は未だ明確にはされていない。

しかし,ヴォプソンはこれまで,情報は固体,液体,気体,プラズマと並ぶ第5の物質状態であり,ダークマター(暗黒物質)も,情報と物質の等価性から説明できる可能性を主張してきた。

この研究は,今後のさらなる理論研究による改良や実験による実証あるいは反証が可能なものであり,情報は第5の物質状態であるというヴォプソンの仮説を含め,その検証が期待される。

詳細については元論文をご参照のこと。

ダークマター 宇宙 情報理論