米不足や価格の高騰,キヌア導入の機会に
たびたび米不足や米の価格高騰がニュースになる。 しかし,そもそもなぜ米の消費にこだわるのだろうか? 米は健康的にも望ましくないし[1],環境負荷も大きい[2]。 米と同程度かそれ以下の価格でありながら,これらの点で米よりも優れた代替は数多くある。 よって,米がない,あるいはますます米の価値が価格と見合わないような状況になったら,それは別の食品を試す良い機会である。 今回はその中でも,キヌア(quinoa)をおすすめしたい[3]。
キヌアは南米アンデス地方原産の植物で,穀物のようであるがほうれん草と同じアカザ科の植物である(擬穀類)。 比較的米に似た利用が可能でありながら,米とは異なり,栄養価が高くグリセミックインデックス(GI)も低い健康的な食品であることから,世界的に注目を増している[4]。
栄養価の比較
その栄養価を米と比較してみよう。
栄養素 | キヌア | 白米 | 玄米 |
---|---|---|---|
カロリー(kcal) | 368 | 356 | 350 |
タンパク質(g) | 14.1 | 6.1 | 7.3 |
脂質(g) | 6.1 | 0.9 | 2.7 |
炭水化物(g) | 64.2 | 77.1 | 73.8 |
食物繊維(g) | 7.0 | 0.5 | 3.0 |
カルシウム(mg) | 47 | 5 | 9 |
鉄分(mg) | 4.6 | 0.8 | 1.4 |
マグネシウム(mg) | 197 | 23 | 110 |
GI値 | 35(低GI) | 73(高GI) | 55(中GI) |
必須アミノ酸 | 全て含む | リジン不足 | リジン不足 |
※数値は乾燥状態での比較。炊飯後は水分を含むため重量が増加する。 |
白米は論外としても,玄米と比べてもキヌアの方が全面的に優れた食品であることが分かる。
レシピ例
食べ方のイメージのために簡単なレシピをいくつか紹介しよう。 まずは基本的な炊き方からである。
基本のキヌア炊き方1
- キヌア1カップを軽く洗う(無洗米のように洗わなくてもいい製品もある)。乾燥状態で1食約30gから50gほど。
- 鍋を用意し,キヌア1に対し,2倍の水(もちろんこれだけでも全く問題ない)あるいは昆布や干し椎茸などのだしを入れる。
- 弱火で15分ほど煮ると水がなくなり,キヌアが3倍ほどに膨らんでくるので火を止める。
- その後,10分ほど蒸らす。
基本のキヌア炊き方2
- 上と同様の分量のキヌアと水を,炊飯器にセットし,通常の白米モードで炊く。
- ただし,米よりも炊飯器の上蓋などが散らかりやすいので注意。
キノアのサツマイモカレー
Bryan Johnsonもキノアを使ったレシピを紹介している。
- 中くらいのサツマイモ一本を,皮をむき角切りにして用意。
- 材料全体が浸るほどの水に,サツマイモと,野菜(ニンニク2,3個,ショウガ大さじ1杯,小さめのタマネギ半分,ニンジン1カップ,カリフラワー1カップ)とアボカドオイルを加え,野菜が柔らかくなるまで25分ほど煮る。
- インゲン豆とエンドウ豆をそれぞれ1カップと,マカデミアナッツミルク1カップを加え,再び沸騰したら火を弱め,さらに5分煮る。
- ライム汁と刻んだコリアンダーを少々加えたら,炊いたキヌアに乗せて完成。
キヌアとひよこ豆のサラダ
キヌアの別の利点は,主食としてではなく,サラダなどにも用いやすいことだ。
- 炊いたキヌア1カップ
- ひよこ豆(水煮)1/2カップ
- きゅうり,トマトなどお好みの野菜
- レモン汁大さじ2,オリーブオイル大さじ1でドレッシング
まとめ
栄養バランスに優れたキヌアは,健康的な食生活を支える理想的な食材である。 主食としてだけでなく,サラダなどの副菜としても取り入れられる。 まだスーパーなどで見かける機会は少ないかもしれないが,消費者がより良い選択を増やしていけば,より良い食材が,より一般的でより安価に購入できるようにもなるだろう。 そのためにも,お米の代わりに,今日からキヌアを取り入れてはいかかがだろうか?
References
- [1] 津川友介. 世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事. 東洋経済新報社, 2018.
- [2] https://toyokeizai.net/articles/-/607891
- [3] 2025年5月21日時点,amazonで検索してみると,安い製品で100gあたり100円程度であり,玄米と同程度の価格である。
- [4] https://www.statista.com/topics/2813/quinoa-market/#editorsPicks