アルコールの摂取が脳の萎縮と関連していることは長い間指摘されてきたことだが,これらの間にある因果関係に異を唱える研究結果が10月にワシントン大学の研究者らによって発表された。

Biological Psychiatryに掲載された彼らの研究によれば,アルコールの摂取が脳の萎縮の原因になっているのではなく,ある遺伝的な要因が,脳の特定の領域の体積が小さいことと,アルコールの過剰な摂取両方の原因になっているというのだ。

彼らは双子や双子でない兄弟の飲酒習慣を比較したもの,アルコール摂取をしたことがない子どもの横断研究,そして死後の脳組織を使った遺伝子発現の分析という三つの独立の研究を基に,アルコール摂取と脳の体積の関係を調べた。

これらの異なる研究からのデータを分析した結果,ある遺伝的要因が前頭前皮質と島皮質という2つの部位の灰白質の体積が小さいことと,アルコール摂取の増加の両方に関連しているという結論が得られた。

データ分析は様々な方法で行われたが,どれも同一の結論に収束していることから,印象的な結果であると研究者は述べている,

また研究者らは,アルコール摂取がさらなる灰白質の減少につながるという従来の見方を損なうものではない,と注意したうえで,アルコール摂取の多い人は,元々灰白質の体積が小さいということを示唆している,と説明している

この研究結果は,若者の将来のアルコール摂取傾向を予測することによって,アルコール乱用を事前に防止することにつなげられるかもしれない。

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