概要と装置

ペットボトルに砂を入れて吊るすだけで,不思議な軌跡を描く実験がある。 家庭でできる科学実験を多数紹介している Bruce Yeany さんが,その装置の作り方と動作の様子を以下の動画で紹介している。

基本的な仕組みはシンプルだ。 砂を入れたペットボトルを,二方向に自由に揺れるようにして吊るす。振り子が揺れると,底に開けた穴から砂が少しずつ落ちていき,その軌跡として曲線が描かれる。 装置の寸法やひもの長さは計算して設計することもできるが,実際には何度か試してみながら調整する方が早い。


Lissajous曲線とは

この装置で描かれる軌跡は,Lissajous(リサージュ)曲線と呼ばれる。 二つの直交する調和振動子 \[ x=A \sin{(at+\delta)}, \quad y=B\sin{(bt)} \] が合成されることで,軌跡に様々な模様が現れる。 ここで,$A$と$B$はそれぞれの方向の振幅,$a$と$b$は振動数,$\delta$は初期位相の差を表す。 振幅($A,B$)や振動数($a,b$)および初期位相($\delta$)の違いによって様々な興味深い図を描く。

振動の組み合わせによって,閉じた楕円状のものから複雑な網目模様まで,さまざまなパターンが現れる。 この曲線はもともと数学者 Nathaniel Bowditch によって調べられ,のちに物理学者 Jules Lissajous が詳細に研究したことで広く知られるようになった。

振幅の減衰が描く模様の変化

ペットボトルの振り子は,当然のことながら摩擦による散逸があるため,時間とともに揺れが小さくなっていく。 そのため描かれる模様も,最初は大きく,次第に中央へ収束していくような形になる。 この減衰による変化もまた興味深く,時間とともに模様が変化していく様子を観察するのも一つの楽しみ方だ。

砂の軌跡が描き出すのは単なる模様ではなく,運動の合成と調和がつくる幾何学的な表現でもある。 身近な材料と少しの工夫で,振動のしくみを視覚的に体験できるこの実験は,科学教育だけでなくアート的な観点からも魅力的だ。


数学 Lissajous曲線 家庭でできる実験 実験 振り子 調和振動子