Hookeの法則と1次元調和振動子

Dr. SSS 2019/05/22 - 20:42:15 2614 古典力学
はじめに

ここでは,Hookeの法則(Hooke's law)と調和振動子について説明する。Hookeの法則とは「バネのような復元力のある物体に力を加えて,自然な形から変形させたとき,復元力は,その変形の程度が小さい限り,変形の大きさに比例する」という法則のことである。 以下,バネの場合を例に,この法則を数式を用いて定式化する。


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内容

運動方程式

ここでは1次元の例を考える。 まず,元の自然な位置を原点$0$にとり,そこからのズレを$x$とする。 力は変位に比例するということなので,その比例定数を$k$とすれば,力の大きさは$kx$とできる。 そして,力の向きは元に戻る方向なのでマイナス。よって力は$F=-kx$と表せる。

一方,力はNewtonの運動方程式より,質量かける位置の2階微分,すなわち加速度と

\begin{equation} m\frac{d^2 x}{dt^2}=F \end{equation}

のように関係づけられるので,バネの運動方程式として

\begin{equation} \label{eq:hooke_law} m\frac{d^2 x}{dt^2}=-kx \end{equation}

が得られる。 あるいは両辺を$m$で割って角振動数(angular frequency )$\omega \equiv \sqrt{k/m}$を定義すると

\begin{equation} \label{eq:harmonic_oscillation} \frac{d^2 x}{dt^2} =-\frac{k}{m}x = -\omega^2 x \end{equation}

と書き直せる。 これは単振動(simple harmonic oscillation)あるいは調和振動(harmonic oscillation)の方程式と呼ばれるもので,この方程式に従う系を調和振動子(harmonic oscillator)と呼ぶ。 この式はとても単純な微分方程式だが,物理をやる限り同じ形の式が至るところに出てくる非常に重要なものだ。

式(\ref{eq:harmonic_oscillation})は,数学的には2階の常微分方程式であり,任意定数を2つ含むものが一般解となる。 ある変数を2回微分したものが(比例定数$\times$元の変数)となる式の2つの独立な解は,$\cos(\omega t)$と$\sin(\omega t)$であるから,一般解はその重ね合わせとして

\begin{equation} x(t)=c_1 \cos(\omega t) + c_2\sin(\omega t) \end{equation}

と得られる。 あるいは

\begin{equation} \cos{\left( \omega t + \alpha \right)} =\cos(\omega t)\cos\alpha -\sin(\omega t)\sin\alpha \end{equation}

の関係より

\begin{equation} x(t)= a\cos{\left( \omega t + \alpha \right)} \end{equation}

と表すこともできる。 ここで,$a$およびは$\alpha$は定数で,それぞれ振幅(amplitude)および初期位相(initial phase)と呼ばれる。 元の表現に含まれる量とは

\begin{equation} a=\sqrt{c_1^2+c_2^2}, \quad \tan\alpha=-\frac{c_2}{c_1} \end{equation}

の関係にある。 初期位相を調整すれば

\begin{equation} \label{eq:sin_sol_HO} x(t)= a\sin{\left(\omega t + \alpha \right)} \end{equation}

と表すこともできる。

単振動の解はまた,複素関数を用いて

\begin{equation} x(t)= \Re{Ae^{i\omega t}} \end{equation}

と表すこともでき,こちらの表現を用いると便利になることも非常に多い。 $\Re$は実部を取ることを意味している。 また

\begin{equation} A=ae^{i\alpha} \end{equation}

は,複素振幅(complex amplitude)と呼ばれる(最後の形については『Eulerの公式』も参照)。



調和振動子のエネルギー

続いて,調和振動子のエネルギーの式を求めよう。 (\ref{eq:hooke_law})の両辺に$dx/dt$をかけて時間で積分する。 両辺共に

\begin{equation} \frac{1}{2}\frac{d}{dt} f(t)^2 = \frac{1}{2} 2 f(t) \frac{d}{dt} f(t) = f(t) \frac{d}{dt} f(t) \end{equation}

を用いて計算出来て,まず左辺は

\begin{equation} m\int \frac{d}{dt}\left(\frac{dx}{dt}\right)\frac{dx}{dt} dt = \frac{1}{2}m\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+C_1 \end{equation}

であり,右辺は

\begin{equation} -k\int x \frac{dx}{dt} = -\frac{1}{2}kx^2 + C_2 \end{equation}

となる。 $C_1$および$C_2$はそれぞれ積分定数である。 これらが等しいということなので,積分定数をまとめて右辺に,残りを左辺にまとめ

\begin{equation} \label{eq:total_energy_HO} \frac{1}{2}m\left(\frac{dx}{dt}\right)^2 +\frac{1}{2}kx^2 =E \end{equation}

が得られる。 まとめた定数を$E$とした。これは,運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和が一定であること,つまりエネルギー保存則を表しており,$E$は全エネルギーに対応する。

(\ref{eq:total_energy_HO})に,解(\ref{eq:sin_sol_HO})を入れると

\begin{equation} kx^2 = ka^2 \sin^2 (\omega t+\alpha) = m\omega^2 \sin^2 (\omega t+\alpha) \end{equation}

および

\begin{equation} m\left(\frac{dx}{dt}\right)^2 =m\omega^2 a^2 \cos^2 (\omega t+\alpha) \end{equation}

より

\begin{equation} E = \frac{1}{2}m\omega^2 a^2 \end{equation}

が得られる。

また,式(\ref{eq:total_energy_HO})は,両辺を$E$で割ると

\begin{equation} \frac{1}{2E}m\left(\frac{dx}{dt}\right)^2 +\frac{1}{2E}kx^2 =1 \end{equation}

となり,$m(dx/dt)$と$x$を座標としたときの楕円の方程式

\begin{equation} \frac{x^{2}}{a^{2}}+\frac{y^{2}}{b^{2}}=1 \end{equation}

に対応する形をしているから,1次元の調和振動子は,運動量と位置を座標とする空間(相空間)上で楕円軌道を描くことがわかる。

$m=1,k=1,A=1$のケース


参考文献