Introduction
ここでは,仕事とエネルギーという物理における2つの基本概念について解説する。仕事とエネルギー保存則
仕事と保存力
力
を力
(
の形にかけるとき,仕事は
となり,始点と終点の値のみで決まる。
このように,仕事が経路に依存せず,始点と終点における値の差のみで決まるとき,
エネルギー保存則
力が保存力の場合,運動方程式は
と書ける。
右辺を運動の軌道に沿って積分したものは,ポテンシャルエネルギーの差になるのであった。 一方,左辺も同様に積分した結果は
となる。 ここに現れる
を運動エネルギー(kinetic energy)という。
(
が成り立つ。 これを並び替えると
が得られる。 これは,運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和である全エネルギー
が軌道上の2点間で不変であることを示している。 2点間の選択は任意であるため,任意の時刻で
が成り立つ。 このように,力が保存的であるとき,質点の全エネルギーが一定であることをエネルギー保存則(law of the conservation of energy)という。
(
と書き直すと,他方の形態のエネルギーの増加(減少)分が,もう一方の形態のエネルギーの減少(増加)分となることがわかりやすくなる。
具体例
保存力の典型的な例の1つが,それぞれ位置
である。
ここで,
であるから,万有引力に対して,ポテンシャル
が定義できる。
これに対し,典型的な非保存力の一つは摩擦力だ。
比例定数を
における。 よってこの力がする仕事は
となる。
これを,(
となり,この場合質点の運動エネルギーの変化分は,ポテンシャルエネルギーに形態を変えるのではなく,摩擦によって散逸していくことが示される。
保存力の判定
保存力のなす仕事が始点と終点の差のみで決まるということは,保存力の場合
が成り立つということである。 これにStokesの定理を適用すると
となる。
ここで,
が成り立つことがわかる。
つまり,回転がゼロの力は保存力であり,その逆も成り立つ。
保存力の回転がゼロであることは,任意のスカラー関数
からも確かめられる。