古典力学 2025-08-30

回転座標系:遠心力とCoriolis力

ScienceTime Team
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回転座標系:遠心力とCoriolis力

Introduction

前項では,回転しない基準系での慣性力を扱った。 今度は,慣性系から見て回転している基準系,回転座標系における運動を考える。

回転系の慣性力

回転座標系での座標$\bm{x}'$を,基底ベクトル$\{\bm{e}'_i\}_{i=1}^3$を用いて

\begin{equation} \bm{x}' = \sum_i \bm{x}'_i\bm{e}'_i \end{equation}

と展開する。 回転系では,基底ベクトル自体が時間変化するため,この時間二階微分は

\begin{equation} \frac{d^2\bm{x}'}{dt^2} = \sum_i \left( \frac{d^2x'_i}{dt^2}\bm{e}'_i + 2\frac{dx'_i}{dt} \frac{d\bm{e}'_i}{dt} + x'_i \frac{d^2\bm{e}'_i}{dt^2} \right) \end{equation}

となる。 よって,$\bm{e}'_i$との内積を取ることで運動方程式から回転座標系での$i$成分を取り出すと

\begin{equation} m\bm{e}'_i\cdot \left[ \sum_i \left( 2\frac{dx'_i}{dt} \frac{d\bm{e}'_i}{dt} + x'_i \frac{d^2\bm{e}'_i}{dt^2} \right) +\frac{d^2\tilde{\bm{x}}}{dt^2} \right] + \bm{e}'_i \cdot\frac{d^2\tilde{\bm{x}}}{dt^2} = F_i \end{equation}

となる。 ここで,$F_i=\bm{e}'_i\cdot md^2\bm{x}/dt^2$とした。 これより,慣性力の$i$成分が

\begin{equation} F^I_i = -m\bm{e}'_i\cdot \left[ \sum_i \left( 2\frac{dx'_i}{dt} \frac{d\bm{e}'_i}{dt} + x'_i \frac{d^2\bm{e}'_i}{dt^2} \right) +\frac{d^2\tilde{\bm{x}}}{dt^2} \right] \end{equation}

と得られる。 このように回転座標系における慣性力には,基底ベクトルの微分が含まれる。 これらの項のより具体的な形を求めるため,まず,回転によるベクトル変化がどう表されるかを考える。

回転によるベクトルの変化

質点が,ある軸を中心に回転している場合を考える。 このとき,微小時間$\delta t$の間に生じる質点の位置ベクトルの微小変化の大きさは

\begin{equation} \delta x = x\sin\theta\omega\delta t \end{equation}

となる。 ここで$\theta$は軸と位置ベクトルがなす角で,$\omega$は回転の角速度である。 大きさ$\omega$で,右手の規則に従い回転軸方向を向くベクトルとして角速度ベクトル$\bm{\omega}$を定義し,外積の定義を用いれば,向きを考慮に入れた式

\begin{equation} \delta\bm{x} = \bm{\omega}\times\bm{x}\delta t \end{equation}

が得られる。 これより,回転による位置ベクトルの変化が

\begin{equation} \frac{d\bm{x}}{dt} = \bm{\omega}\times\bm{x} \end{equation}

と表されることがわかる。

基底ベクトル$\bm{e}_i$は,位置ベクトルの$i$成分を$1$,それ以外の成分を$0$とすれば得られるから,同様の式

\begin{equation} \frac{d\bm{e}_i}{dt} = \bm{\omega}\times\bm{e}_i \end{equation}

に従う。 また,任意のベクトル$\bm{A}$は基底ベクトルを用いて

\begin{equation} \bm{A} = \sum_i A_i\bm{e}_i \end{equation}

と展開できるから

\begin{equation} \frac{d\bm{A}}{dt} = \sum_i \frac{dA_i}{dt}\bm{e}_i + \bm{\omega}\times\bm{A} \end{equation}

となる。 よって,基底ベクトルの二階微分についても

\begin{equation} \frac{d^2\bm{e}_i}{dt^2} = \bm{\omega}\times \frac{d\bm{e}_i}{dt} = \bm{\omega}\times (\bm{\omega}\times\bm{e}_i) \end{equation}

のように計算できる。

遠心力とCoriolis力

上の結果を利用すれば,回転によって生じる慣性力が,角速度ベクトルを用いて

\begin{equation} \bm{F}_R^I = -2m \bm{\omega}\times\frac{d\bm{x}'}{dt} -m\bm{\omega}\times (\bm{\omega}\times\bm{x}') \end{equation}

と表せる。 二項目は,回転中心から外側に向く遠心力(centrifugal force)である。 回転軸と直交する平面内にある質点の運動を考えれば,ベクトル公式$\bm{a}\times(\bm{b}\times\bm{c})=\bm{b}(\bm{a}\cdot\bm{c})-\bm{c}(\bm{a}\cdot\bm{b})$および$\bm{\omega}\cdot\bm{x}'=0$より

\begin{equation} -m\bm{\omega}\times (\bm{\omega}\times\bm{x}') = m\omega^2\bm{x}' \end{equation}

となる。 もう一つの速度に依存する項は,Coriolis力(Coriolis force)と呼ばれるものである。 これは$\bm{\omega}$と直交するから,回転面内で,回転基準系から見た速度に直交する向きに働く。 回転は右手回り(右手親指を回転軸に向けたとき,その他の指の向きが回転方向)なので,速度が回転面の外側に向いている場合,回転座標系の観測者からは回転とは逆向きに力が作用するように見える。

References

  • Landau, L. D., & Lifshitz, E. M. (1976). Mechanics: Landau and Lifshitz: Course of Theoretical Physics, Volume 1. 3rd ed.. Elsevier Science.
    ――(1986). 力学 (ランダウ=リフシッツ理論物理学教程). 広重 徹, 水戸 巌 訳. 東京図書.
  • 戸田 盛和. (1982). 物理入門コース1 力学. 岩波書店.
  • 米谷 民明. (1993). 力学. 培風館.