荷電粒子の運動方程式

Dr. SSS 2019/07/24 - 09:10:50 2430 古典力学
はじめに

Lagrangianから,変分原理によって単一荷電粒子の運動方程式を導く。 その後,一様で定常な電磁場を仮定した場合の解を示す。


keywords: 電磁気学, 運動方程式, Lagrange力学, Euler-Lagrange方程式, Lagrangian, サイクロトロン運動

内容

運動方程式の導出

単一荷電粒子のLagrangianは

\begin{equation} L = \frac{1}{2}m \left(\frac{d\bm{x}}{dt} \cdot \frac{d\bm{x}}{dt} \right) -e\left[\phi(x(t),t) - \frac{d\bm{x}}{dt} \cdot \bm{A} (x(t),t)\right] \end{equation}

で与えられる。 ここで$q$は電荷,$\phi$は静電ポテンシャル,$\bm{A}$はベクトルポテンシャルである。 成分($j=1,2,3$)で表せば

\begin{equation} L = \frac{1}{2}m \left( \frac{dx_j}{dt} \frac{dx^j}{dt} \right) -q\left[ \phi(x(t),t) - \frac{dx^j}{dt} A_j (x(t),t) \right] \end{equation}

となる。 上下繰り返しの添え字は和を取る。 これを,Euler-Lagrange方程式に入れると

\begin{align} \frac{\pd L}{\pd x^i} =& -q\frac{\pd \phi}{\pd x^i} + q\frac{dx^j}{dt} \frac{\pd A_j}{\pd x^i} \\ % \frac{d}{dt} \frac{\pd L}{\pd \left( \frac{dx^i}{dt} \right) } =& m\frac{d^2x_i}{dt^2} + q\frac{\pd A_i}{\pd t} + q\frac{\pd A_i}{\pd x^j} \frac{dx^j}{dt} \end{align}

が釣り合うということなので,運動方程式としてLorentz力の式

\begin{align} \notag m \frac{d^2x_i}{dt^2} =& -q\frac{\pd \phi}{\pd x^i} -q\frac{\pd A_i}{\pd t} + q\frac{dx^j}{dt} \left( \frac{\pd A_j}{\pd x^i} -\frac{\pd A_i}{\pd x^j}\right) \\ \label{eq:motion_in_EB} =& q\left( E_i +\epsilon_{ijk} \frac{dx^j}{dt} B^k \right) \end{align}

が得られる。ここで,$\epsilon_{ijk}$はLevi-Civita記号で

\begin{equation} E_i = -\frac{\pd \phi}{\pd x^i} -\frac{\pd A_i}{\pd t},\quad B^k = \epsilon^{klm} \frac{\pd A_m}{\pd x^l} \end{equation}

はそれぞれ電場と磁場である。また,(\ref{eq:motion_in_EB})で,$\delta_i^l \delta_j^m - \delta_i^m\delta_j^l =\epsilon_{ijk}\epsilon^{klm}$の関係を使った。 ベクトル表記では

\begin{equation} \label{eq:motion_in_EB_vect} m\frac{d^2\bm{x}}{dt^2} = q\left( \bm{E}+\frac{d\bm{x}}{dt}\times\bm{B} \right) \end{equation}

となる。



一様で定常な電磁場中の運動

一様で定常な電磁場中の運動を考える。 磁場の向きを$z$方向にとり,電場の向きは任意とする。 すなわち$\bm{B}=(0,0,B)$および$\bm{E}=(E_x,E_y,E_z)$とする。 このとき運動方程式(\ref{eq:motion_in_EB_vect})は

\begin{align} \label{eq:motion_in_EB_x} \frac{d v_x}{dt} =& \frac{q}{m} (E_x+v_y B) = \Omega \left(\frac{E_x}{B} + v_y\right) \\ \label{eq:motion_in_EB_y} \frac{d v_y}{dt} =& \frac{q}{m} (E_y-v_x B) = \Omega \left(\frac{E_y}{B} -v_x\right) \\ \label{eq:motion_in_EB_z} \frac{d v_y}{dt} =& \frac{q}{m}E_z \end{align}

となる。 ここで,$\Omega=qB/m$である。 $z$方向の解は自明で

\begin{align} v_z=&\frac{q}{m}E_z t +v_{z0}\\ z =&\frac{q}{2m}E_z t^2 + v_{z0}t + z_0 \end{align}

と磁力線に沿って電場に駆動される等加速度運動となる。 $z_0$および$v_{z0}$はそれぞれ初期位置と初期速度の$z$成分である。

磁力線に垂直な成分を調べるために,(\ref{eq:motion_in_EB_x})と(\ref{eq:motion_in_EB_y})をさらに時間で微分する。 すると

\begin{align} \frac{d^2 v_x}{dt^2} =& \Omega\frac{dv_y}{dt} \\ \frac{d^2 v_y}{dt^2} =& -\Omega \frac{dv_x}{dt} \end{align}

であり,これらに,それぞれ(\ref{eq:motion_in_EB_y})および(\ref{eq:motion_in_EB_x})を代入することで

\begin{align} \frac{d^2 v_x}{dt^2} =& -\Omega^2 v_x +\Omega^2\frac{E_y}{B} \\ \frac{d^2 v_y}{dt^2} =& -\Omega^2 v_y -\Omega^2\frac{E_x}{B} \end{align}

を得る。 ここで,電磁場が定常であることを利用し,上式を

\begin{align} \frac{d^2}{dt^2} \left( v_x-\frac{E_y}{B} \right) =& -\Omega^2 \left(v_x -\frac{E_y}{B}\right) \\ \frac{d^2}{dt^2} \left( v_y+\frac{E_x}{B} \right) =& -\Omega^2 \left(v_y+\frac{E_x}{B}\right) \end{align}

と変形する。 左辺カッコ内をそれぞれ$v_x'$および$v_y'$とすれば,これらの解は直ちに

\begin{align} v_x'=& v_\perp \cos(\Omega t+\theta_0) \\ v_y'=& -v_\perp \sin(\Omega t+\theta_0) \end{align}

と得られる。 ここで$v_\perp$および$\theta_0$は積分定数である。 そしてこれらを,元の変数に戻すことで,垂直方向の速度が

\begin{align} v_x=& v_\perp \cos(\Omega t+\theta_0) + \frac{E_y}{B}\\ v_y=& -v_\perp \sin(\Omega t+\theta_0) - \frac{E_x}{B} \end{align}

と求まる。 最後に,これらを積分することで垂直方向の運動方程式の解

\begin{align} x=& \frac{v_\perp}{\Omega} \sin(\Omega t+\theta_0) + \frac{E_y}{B}t + x_0\\ y=& \frac{v_\perp}{\Omega} \cos(\Omega t+\theta_0) - \frac{E_x}{B}t + y_0 \end{align}

を得る。

すなわち荷電粒子の磁力線に垂直な方向への運動は,半径

\begin{equation} \rho_L \equiv \frac{v_\perp}{|\Omega|} \end{equation}

周波数$\Omega$で磁力線周りを周回する運動と,ドリフト速度

\begin{equation} \bm{v}_E \equiv \frac{\bm{E}\times\bm{B}}{B^2} = \left( \frac{E_y}{B},-\frac{E_x}{B},0 \right) \end{equation}

による等速運動の重ね合わせで与えられる。 周回運動の方は,サイクロトロン運動(cyclotron motion)ジャイロ運動(gyro motion)などと呼ばれ,周回半径$\rho_L$をサイクロトロン半径(cyclotron radius)ジャイロ半径(gyro radius)あるいはLarmor半径(Larmor radius)と,周波数$\Omega$をサイクロトロン周波数(cyclotron frequency)ジャイロ周波数(gyro frequency)と呼ぶ。

問題

Q. 以下の記述のうち,サイクロトロン運動の性質として正しいものを選べ。

  1. 電子と陽子では,周回方向が逆になる。
  2. 磁場が強いほど,サイクロトロン半径は大きくなる。
  3. 質量が大きい粒子ほど,サイクロトロン半径は小さくなる。
  4. 電場が存在しない場合,サイクロトロン運動は起きない。

参考文献

  • 米谷 民明. (1993). 力学. 培風館.