一様な重力中の運動

Dr. SSS 2023/12/30 - 16:55:42 11232 古典力学
はじめに

前項『等速度運動と等加速度運動』では,一様で一定の力が働く場合の運動について学んだ。 そうした力の具体的な一例として,地表付近の重力が挙げられる。 ここでは,最も単純な例から始め,重力下での単純な運動のいくつかについて学ぶ。


keywords: 運動方程式, 重力, 自由落下

内容

自由落下

一様で一定の力の一例として,地表付近の重力を用いることが出来る。 重力$\bm{F}_g$は物体の質量$m$に比例し,それによる加速度は物体によらず一定で,近似的に空間的にも一様であるとみなせる。 したがって,定数ベクトル$\bm{g}$を用いて

\begin{equation} \bm{F}_g = m\bm{g} \end{equation}

のように書ける。 $\bm{g}$は重力加速度(gravitational acceleration)と呼ばれる。 重力は鉛直成分しか持たないため,$z$軸上向きを鉛直方向にとれば

\begin{equation} \bm{F}_g = -mg\bm{e}_z \end{equation}

とも表せる。 ここで$\bm{e}_z$は$z$方向の単位ベクトルである。

まず,重力以外の外力の影響を受けない運動,すなわち自由落下(free fall)について考える。 この場合,運動方程式は上の議論より

\begin{equation} \frac{d^2z}{dt^2}=-g \end{equation}

となる。 その解は前項での議論より,$z$方向の初期位置および初速をそれぞれ$z_0$と$v_{z0}$とし

\begin{equation} z=-\frac{1}{2}gt^2+v_{z0}t+z_0 \end{equation}

である。

下の動画は,物理学者Brian Coxが,BBCのドキュメンタリ番組『Human Universe』の一編で,世界最大の真空室を訪れたときに行われた実験の様子を写したものである。 空気抵抗がなければ自由落下による落下速度は物質によらないということを実演している。



斜面を滑る運動

続いて,物体が滑らか斜面上にある場合を考える。 地面に対する斜面の傾きは$\theta$とする。 今度は,斜面に沿って下向きに$x$軸を取ると,重力の$x$成分は

\begin{equation} F_{gx} = mg\sin\theta \end{equation}

で与えられる。 改めて,ここでは斜面下向きを$x$軸の正に取っているから,右辺に負号は付いていないことに注意しよう。 また,$\sin\theta$の因子が現れるわけは,図から三角形の相似を利用して示すこともできるが,斜面の角度が$0$であれば$F_x$はゼロであり,角度が$90$度になれば$mg$に一致することからも理解できる。

同様の考察から,斜面に対し垂直な方向を$y$軸に取ると,重力の$y$成分は

\begin{equation} F_{gy} = -mg\cos\theta \end{equation}

となる。 物体が斜面に沿って運動するというのは,$y$が一定であるということである。 $F_{gy}$の作用にもかかわらずその条件が満たされるには

\begin{equation} F_{gy}+F'=0 \end{equation}

となる別の力$F'$が必要である。 通常,斜面による反作用力である垂直抗力(normal force)$N$がこの力に対応する。

これらより,斜面を滑る物体の運動方程式が

\begin{equation} \frac{d^2x}{dt^2} =g\sin\theta \end{equation}

\begin{equation} \frac{d^2y}{dt^2}=0 \end{equation}

と得られる。 $x$成分は等加速度運動であるから,解は自由落下の場合と同様にして得られる。

放物運動

次に考えるのは,水平から角度をつけて投げ出された物体の運動である。 ここでは,水平方向に$x$軸を,鉛直方向に$y$軸を取る。 初速度の大きさを$v_0$とすると,それの$x$成分$,y$成分はそれぞれ

\begin{equation} v_{x0}=v_0\cos\theta, \quad v_{y0}=v_0\sin\theta \end{equation}

となる。 $\theta$は水平からの角度$\theta=\tan^{-1}(v_{y0}/v_{x0})$である。 簡単のために空気抵抗を無視すると,$x$方向$y$方向の運動はそれぞれ

\begin{equation} m\frac{d^2x}{dt^2}=0 \end{equation}

および

\begin{equation} m\frac{d^2y}{dt^2}=-mg \end{equation}

で記述される。 これらの方程式は互いに独立であり,$x$方向には等速度運動

\begin{equation} x=v_{x0}t+x_0 \end{equation}

$y$方向には等価速度運動

\begin{equation} y=-\frac{1}{2}gt^2+v_{y0}t+y_0 \end{equation}

を行うことを意味している。 簡単のために初期位置$(x_0,y_0)$を原点にとり,$t$を消去すれば

\begin{equation} \begin{split} y =&-\frac{1}{2}g\left(\frac{x}{v_{x0}}\right)^2 +\frac{v_{y0}}{v_{x0}}x \\ % =& -\frac{1}{2}g\frac{x^2}{v_0^2\cos^2\theta} +x\tan\theta \end{split} \end{equation}

が得られる。 つまり物体は放物軌道を描く。 $x$方向の到達距離は,$y$が再び0になるところであり

\begin{equation} x =\frac{2}{g}v_0^2\cos^2\theta \tan\theta =\frac{v_0^2}{g}\sin{2\theta} \end{equation}

となる。


参考文献