有名な二重スリット実験を反物質を用いて行った初の実験結果がScience Advancesに掲載された。

二重スリット実験とは,粒子の波動性を実証する実験で,発射点から出発した粒子が,障壁に空けられた二つのスリットを同時に通ることで,向かいにあるスクリーンに干渉縞を示すという結果が得られるものだ。

また,反物質とは通常の物質と電荷や磁気モーメントの符号が反対のもので,今回の実験は電子の反粒子である陽電子が用いられた。低エネルギービームの形で入射し,タルボ・ロー干渉とった現象を用いるなど,光子や電子を用いたこれまでの実験よりはセットアップが複雑なものだが,同様の性質を確認することができるようになっている。

そして,陽電子も通常の物質同様に,干渉縞を示すことが確認された。

なぜ宇宙には反物質より物質の方が豊富にあるのかということは未だに謎であり,今回の研究結果やそこで用いた手法は,物質と反物質の性質の違いを調べる研究の進展につながる。

反物質への重力の作用が,通常の物質とは異なる可能性も検討されており,著者らは,今回用いた技術の今後の応用として,反物質の重力加速を測定することなどを検討している。

研究論文:

https://advances.sciencemag.org/content/5/5/eaav7610