Lie代数の表現:随伴表現とKilling形式

Dr. SSS 2021/06/05 - 10:11:08 群論
はじめに

Lie代数の表現と,その中で特に重要な随伴表現,および今後の議論に必要となるKilling形式について紹介する。


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内容

Lie代数の表現

群$G$から$GL(n,F)$への準同型写像,すなわち任意の$g_i,g_j\in G$に対して

\begin{align} \label{eq:D_homomorphic} D(g_i g_j)=D(g_i)D(g_j) \end{align}

を満たす$D$(またはそれと,それが作用するベクトル空間を合わせたもの)を,群$G$の表現というのであった。 $F$は表現空間が定義される体で,ここでは実数$R$または複素数$C$であるとする。

Lie代数の表現についても,次のように定義する。

定義: Lie代数$\frg$から$\frgl$への準同型写像$\rho$をLie代数の表現という。

Lie代数の表現が満たすべき条件を明示すると,$\forall X,\forall Y \in \frg$および$\forall a, \forall b \in F$に対し

  • $\rho(aX+bY)=a\rho(X)+b\rho(Y)$
  • $\rho([X,Y])=[\rho(X),\rho(Y)]$

である。


随伴表現

Lie代数$\mathfrak{g}$の元$X$に対し

\begin{align} \ad(X)Y=[X,Y]\in \mathfrak{g}, \ Y \in \mathfrak{g} \end{align}

を定義する。 これは

\begin{align} \ad(aX+bY) = a\ \ad(X)+b\ \ad(Y) \end{align}

および

\begin{align} \ad([X,Y]) = [\ad(X),\ad(Y)] \end{align}

を満たすから,Lie代数の表現となる。 これを,Lie代数の随伴表現(adjoint representation)という。




Killing形式

定義:

\begin{align} B(X,Y)\equiv \tr(\ad(X)\ad(Y)) \end{align}

で定義されるLie代数$\frg$上の双一次形式を,$\frg$のKilling形式(Killing form)という。


定義: すべての$X\in \frg$について$B(X,Y)=0$であるのは,$Y=0$である場合に限られるとき,Killing形式は非退化(non-degenerate)であるという。


定義: Lie代数$\mathfrak{g}$のKilling形式が非退化であるとき,$\mathfrak{g}$は半単純Lie代数(semi-simple Lie algebra)であるという。


参考文献