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    二項定理

    Dr. SSS 2020/04/02 - 14:15:15 1518 基礎数学
    はじめに

    二項定理(binomial theorem)

    \begin{align} \notag (x+y)^n = \sum_{k=0}^n \left( \begin{array}{c} n \\ k \end{array} \right) x^k y^{n-k} \end{align}

    は,高校で習う初等的な定理であるが,大学以降の物理を学ぶ上でもしばしば必要になる。ここでは,単純な例から始めて,二項定理の理屈を簡単に説明する。

    以下を読み進める前に

    \begin{align} \notag \left( \begin{array}{c} n \\ k \end{array} \right) = \frac{n!}{k!(n-k)!} \end{align}

    の関係だけ確認しておいてほしい。高校では同じものを${_n C_k}$と記すのが一般的かもしれない。


    keywords: 代数学, 数学, 高校数学

    $(x+1)^n$のケース

    はじめに

    \begin{align} (x+1)^2=(x+1)(x+1) \end{align}

    を展開することを考える。 この式の展開は,左の$(x+1)$から$x$か$1$を選び,右の$(x+1)$から$x$か$1$選んだものと掛け合わせたものを,全部足し合わせて得られる。 つまり,やり方としては全部で

    1. 左の$(x+1)$から$x$を選び,右の$(x+1)$から$x$を選んでかける:$x^2$
    2. 左の$(x+1)$から$x$を選び,右の$(x+1)$から$1$を選んでかける:$x$
    3. 左の$(x+1)$から$1$を選び,右の$(x+1)$から$x$を選んでかける:$x$
    4. 左の$(x+1)$から$1$を選び,右の$(x+1)$から$1$を選んでかける:$1$

    のパターンがあり,これらを全部足して

    \begin{align} (x+1)^2=x^2+2x+1 \end{align}

    と答えが得られる。 このとき,$x$同士の掛け算は,両方で合わせて2つある$x$から2つとも選んだ場合の$x^2$で,それは1通りしかない。 つまり

    \begin{align} \notag \left( \begin{array}{c} 2 \\ 2 \end{array} \right) x^2=x^2 \end{align}

    で,上の(1)に対応する。 一方,$x$が1次の項は,2つある$x$から1つだけを選んだ場合に作られる項$x \times 1$で,上の(2)と(3)に対応してその作り方は2通りあるから

    \begin{align} \notag \left( \begin{array}{c} 2 \\ 1 \end{array} \right)x^1 =2x \end{align}

    である。 最後に,$x$について0次の項は,2つある$x$から1つも選ばない場合

    \begin{align} \notag \left( \begin{array}{c} 2 \\ 0 \end{array} \right)x^0 =1 \end{align}

    で,上の(4)に対応する。

    3次の式

    \begin{align} (x+1)^3=(x+1)(x+1)(x+1) \end{align}

    についても同じで

    1. 3つある$x$から3つとも選ぶ: $$ \left( \begin{array}{c} 3 \\ 3 \end{array} \right)x^3 =x^3 $$
    2. 3つある$x$から2つ選ぶ: $$ \left( \begin{array}{c} 3 \\ 2 \end{array} \right)x^2 =3x^2 $$
    3. 3つある$x$から1つだけ選ぶ: $$ \left( \begin{array}{c} 3 \\ 1 \end{array} \right)x^1 =3x $$
    4. 3つある$x$から1つも選ばない: $$ \left( \begin{array}{c} 3 \\ 0 \end{array} \right)x^0 =1 $$

    のパターンがあり,全部足して

    \begin{align} \notag (x+1)^3 =& \left( \begin{array}{c} 3 \\ 0 \end{array} \right)x^0 + \left( \begin{array}{c} 3 \\ 1 \end{array} \right)x^1 + \left( \begin{array}{c} 3 \\ 2 \end{array} \right)x^2 + \left( \begin{array}{c} 3 \\ 3 \end{array} \right)x^3 \\ =& x^3+3x^2+3x+1 \end{align}

    が得られる。

    これらを一般化することで

    \begin{align} \notag (x+1)^n =& \left( \begin{array}{c} n \\ 0 \end{array} \right)x^0 + \left( \begin{array}{c} n \\ 1 \end{array} \right)x^1 + ... + \left( \begin{array}{c} n \\ n-1 \end{array} \right)x^{n-1} + \left( \begin{array}{c} n \\ n \end{array} \right)x^n \\ \label {eq:x+1} =& \sum_{k=0}^n \left( \begin{array}{c} n \\ k \end{array} \right) x^k \end{align}

    という公式が得られる。




    $(x+y)^n$のケース

    ここまでの議論からわかる通り,この関係は,(\ref{eq:x+1})の左辺に含まれる$1$を任意の数$y$に置き換えたケース

    \begin{align} (x+y)^n \end{align}

    についても一般化できる。

    $n$個の$x$から$k$個を選び出す場合,$n-k$個の$y$が代わりに選択されることに注意すれば,この場合の展開式は

    \begin{align} \notag (x+y)^n =& \left( \begin{array}{c} n \\ 0 \end{array} \right)x^0 y^n + \left( \begin{array}{c} n \\ 1 \end{array} \right)x^1 y^{n-1} + ... + \left( \begin{array}{c} n \\ n-1 \end{array} \right)x^{n-1} y^1 + \left( \begin{array}{c} n \\ n \end{array} \right)x^n y^0 \\ =& \sum_{k=0}^n \left( \begin{array}{c} n \\ k \end{array} \right) x^k y^{n-k} \end{align}

    となることがわかる。これが,始めに示した二項定理の一般的な形である。



    参考文献


    目次

    三角関数

    指数・対数

    場合の数と確率