Introduction
一般線形群の定義について説明する。
線形変換とその表現
同じ体(四則演算が定義できる集合)上のベクトル空間からへの写像で,任意のとについて
という性質を満たすものを,線形写像(linear map)という。
同じ体上というのは,例えばベクトル空間が実ベクトル空間であればも実ベクトル空間,が複素ベクトル空間であればも複素ベクトル空間といった意味である,
特に,であるとき,すなわち同じベクトル空間上の写像であるとき,を線形変換(linear transformation)や1次変換などという。
の次元をとし,基底をと選ぶと,の任意のベクトルは
と展開でき,これに対するによる変換は
と書ける。
この行列を,基底を用いたの表現行列(representation matrix)という。
何もしないという変換(恒等変換)も,単位行列によって表現できる。
線形変換群
変換を続けて行った結果は
となり,という変換も,という成分を持つ行列で表現できる。
また,線形代数の基本的な性質として,任意の行列は積の結合則を満たす。
さらに,表現行列が正則な行列,すなわち逆行列を持つ行列であれば,線形変換の表現行列は群としての定義を満たす。
すなわち,正則な正方行列からなる集合は群を成している。
これをと表し,一般線形群(general linear group)と呼ぶ。
は行列の成分が属する体を指しており,実数を成分とする行列からなる場合はと表し,実一般線形群(real general linear group)と,複素数を成分とする行列からなる場合はと表し,複素一般線形群(complex general linear group)と呼んだりもする。
一般線形群のことを線形変換群や1次変換群と呼ぶこともある。
特殊線形群
ここでは,体としてまたは複素数体を考え,はかのどちらかを表すとする。
体上で定義される次正方行列すべての集合のうち,正則な行列(逆行列を持つ行列)の作る集合は群を成し,それを一般線形群と呼ぶのであった。
正則であるということは行列式が0でないということだから,は
と表せる。
このうち,行列式が1である部分,すなわち
を,特殊線形群(special linear group)という。
特殊線形群がの部分群となっていることは次のことからわかる。
まず,定義より,任意のについてであるが,行列式の性質から,であるから
とわかる。
また,逆行列の性質として,が成り立つから,任意のについて,である。
よって
であり,()および()より,がの部分群であることが言える。