群論 2020-12-05

一般線形群

ScienceTime Team
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一般線形群

Introduction

一般線形群の定義について説明する。

線形変換とその表現

同じ体K(四則演算が定義できる集合)上のベクトル空間VからWへの写像で,任意のx,yVa,bKについて

(1)T(ax+y)=aT(x)+bT(y)

という性質を満たすものを,線形写像(linear map)という。 同じ体上というのは,例えばベクトル空間Vが実ベクトル空間であればWも実ベクトル空間,Vが複素ベクトル空間であればWも複素ベクトル空間といった意味である, 特に,V=Wであるとき,すなわち同じベクトル空間上の写像であるとき,T線形変換(linear transformation)1次変換などという。

Vの次元をnとし,基底をej (j=1,2,...,n)と選ぶと,Vの任意のベクトルx

(2)x=j=1nxjej

と展開でき,これに対するTによる変換は

(3)T(x)=j=1nxjT(ej)=j=1nxji=1nTijei

と書ける。 この行列を,基底{ej}を用いたT表現行列(representation matrix)という。 何もしないという変換(恒等変換)も,単位行列Iによって表現できる。


線形変換群

変換T,Uを続けて行った結果は

UT(x)=j=1nxjUT(ej)=U(j=1nxji=1nTijei)(4)=j=1nxjk=1n(i=1nUkiTij)ek

となり,UTという変換も,i=1nUkiTijという成分を持つ行列で表現できる。 また,線形代数の基本的な性質として,任意の行列は積の結合則を満たす。 さらに,表現行列が正則な行列,すなわち逆行列を持つ行列であれば,線形変換の表現行列は群としての定義を満たす。

すなわち,正則な正方行列からなる集合は群を成している。 これをGL(n,F)と表し,一般線形群(general linear group)と呼ぶ。 Fは行列の成分が属する体を指しており,実数を成分とする行列からなる場合はGL(n,R)と表し,実一般線形群(real general linear group)と,複素数を成分とする行列からなる場合はGL(n,C)と表し,複素一般線形群(complex general linear group)と呼んだりもする。 一般線形群のことを線形変換群や1次変換群と呼ぶこともある。


特殊線形群

ここでは,体としてRまたは複素数体Cを考え,KRCのどちらかを表すとする。 体K上で定義されるn次正方行列すべての集合M(n,K)のうち,正則な行列(逆行列を持つ行列)の作る集合GL(n,K)は群を成し,それを一般線形群と呼ぶのであった。

正則であるということは行列式が0でないということだから,GL(n,K)

(5)GL(n,K)={AM(n,K) | detA0}

と表せる。 このうち,行列式が1である部分,すなわち

(6)SL(n,K)={AM(n,K) | detA=1}

を,特殊線形群(special linear group)という。

特殊線形群SL(n,K)GL(n,K)の部分群となっていることは次のことからわかる。 まず,定義より,任意のg,hSL(n,K)についてdetg=deth=1であるが,行列式の性質から,det(gh)=det(g)det(h)=1であるから

(7)g,hSL(n,K)ghSL(n,K)

とわかる。 また,逆行列の性質として,det(g1)=(detg)1が成り立つから,任意のgSL(n,C)について,det(g1)=(detg)1=1である。 よって

(8)gSL(n,K)g1SL(n,K)

であり,(7)および(8)より,SL(n,K)GL(n,K)の部分群であることが言える。