集合$B$の元がすべて集合$A$にも含まれるとき,$B$は$A$の部分集合(subset)と言い$B \subset A$で表す。 空集合や$A$自身もまた$A$の部分集合とみなされる。 すると,例えば集合$A=\{ a, b, c \}$の部分集合は
となる。
また,集合$A$の8つの部分集合全体から成る集合
を$\mathfrak{B}(A)$と表し,$A$のべき集合(power set)と呼ぶ。
一般に,$m$個の要素を持つ有限集合$A$の部分集合の個数は,$2^m$となる。 このことは以下のようにして示すことができる。 まず,引き続き$A=\{a,b,c \}$の例で考えよう。 $x \in A$の各要素がある集合$S$の要素であれば$1$,そうでなければ$0$を返す関数$f(x)$を考える。 集合$A$から部分集合を構成するというのは,$A$から特定の要素を選び出して,それ以外を捨てる操作に対応する。 そして,要素を選択することを$f(x)=1$,捨てることを$f(x)=0$と対応付けることができる。 つまり,(\ref{A_subset})においては
といった具合である。 対応付けの数は,各要素ごとに$0$か$1$の$2$通りずつあるため,$2\times 2\times 2=2^3$となる。 これを$m$個の要素を持つ集合のケースに一般化できることは明らかだろう。 よってまた,べき集合(power set)$\mathfrak{B}(A)$の濃度についての公式
が得られる。
自然数の集合$N$についても式(\ref{eq:card_power_set})を適用することができ
となる。 また,この濃度は,連続体の濃度と等しい。 すなわち
である。 このことは以下のように示される。
区間$[0,1)$の実数の集合を考える。 2進数で表せば,$[0,1)$に含まれる任意の実数は,小数点以下の$0$と$1$の羅列で表現することができる。 そこで,例えば
なような要素を取り出したとき,小数点以下1桁目を$0$番目とし,$1$が現れる桁の番数を自然数に対応させることで
という集合を作ることができる。 これらはみな,自然数の集合の部分集合であり,すなわち自然数のべき集合の要素となっている。 このようにして,$[0,1)$の任意の要素に,自然数のべき集合の要素を1対1に対応付けられる。 『連続体の濃度:対角線論法と連続体仮説』での議論より,$[0,1)$の濃度も連続体の濃度$\aleph$を持つため,これより自然数のべき集合の濃度は,実数の濃度と等しいことがいえる。