立体射影

Dr. SSS 2021/08/20 - 09:54:28 微分幾何学
はじめに

多様体は,チャート(開近傍とEuclid空間への写像の組)を張り合わせて構成されるが,複数のチャートを必要とするもののうち,最も単純で身近な例が球である。

以下では,2次元単位球面$S^2$から北極$N=(0,0,1)$の1点を除いた$M=S^2-\{N\}$から$R^2$への同相写像(相互に連続な1対1写像)を定義する方法と,その写像の具体的な表現について説明する。


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内容

立体射影

$x^2+y^2+z^2=1$で定義される2次元単位球面$S^2$を考える。 単一の写像では,$S^2$を1対1でEuclid平面$R^2$に対応付けることはできないが,$S^2$から北極$N=(0,0,1)$の1点を除いた$M=S^2-\{N\}$から$R^2$であれば,次のようにして,同相写像を定義することができる。

下図のように,$N=(0,0,1)$から$S^2$上の点$\bm{x}=(x,y,z)$を通る直線$l$を引き,$z=0$で定義される面$R^2$との交点を$\bm{x}'=\varphi(\bm{x})$とすると,この写像$\varphi$は同相になる。 これを,ステレオ投影(stereographic projection)立体射影などという(トップの図はこの写像の断面図)。

以下,この写像の具体的な表現を考える。


立体射影の表現

直線$l$は,パラメータ$t$を用いて

\begin{align} \label{eq:StereoPara} t\bm{x}+(1-t)N = (tx,ty,tz+(1-t)) \end{align}

と表すことができる。

$\varphi(\bm{x})$における$t$の値$t_0$は,$z$座標を0として

\begin{align} t_0z+(1-t_0)=0 \end{align}

より

\begin{align} t_0=\frac{1}{1-z} \end{align}

と決まる($\bm{x}\neq N$なので$z\neq 1$)。 これを(\ref{eq:StereoPara})に入れると

\begin{align} \label{eq:phix} \varphi(\bm{x}) = \left( \frac{x}{1-z}, \frac{y}{1-z} \right) \end{align}

が求まる。

今度は反対に,平面$R^2$から$S^2$への写像の表現を求める。 $R^2$の点を$\bm{x}'=(x',y')$とすると,(\ref{eq:phix})より

\begin{align} \label{eq:xyprime} x'=\frac{x}{1-z}, \quad y'=\frac{y}{1-z} \end{align}

であるから,これと$x^2+y^2+z^2=1$の関係を合わせると

\begin{align} \label{eq:1-z2x2} (1-z^2)|\bm{x}'|^2=1-z^2 \end{align}

が得られ,$z\neq 1$であるから$(1-z)$で割ることができて

\begin{align} (1-z)|\bm{x}'|^2=1+z \end{align}

となる。

これを整理することで,結果的に

\begin{align} z=\frac{|\bm{x}'|^2-1}{|\bm{x}'|^2+1} \end{align}

という関係が得られる。 これを(\ref{eq:xyprime})に入れることで$x',y'$の表現も得られる:

\begin{align} \bm{x} =\varphi^{-1}(\bm{x}') = \left( \frac{2x'}{|\bm{x}'|^2+1}, \frac{2y'}{|\bm{x}'|^2+1}, \frac{|\bm{x}'|^2-1}{|\bm{x}'|^2+1} \right) \end{align}




複素空間の場合

応用的に重要になるため,$y$軸を虚軸とし,$z=0$の平面を複素平面とみなした場合の表現についても考えておこう。 このとき$\varphi$によって$\bm{x}\in M$は,複素平面上の1点に写されるから,(\ref{eq:phix})に対応するのは

\begin{align} \varphi(\bm{x}) = \zeta\equiv \frac{x+iy}{1-z} \end{align}

である。

反対に複素平面上の点$\zeta$からの逆像は,(\ref{eq:1-z2x2})に対応する式が

\begin{align} (1-z^2)|\zeta|^2=1-z^2 \end{align}

となることから

\begin{align} z=\frac{|\zeta|^2-1}{|\zeta|^2+1} \end{align}

および

\begin{align} \label{eq:cmplx_xy} x+iy= \frac{2\zeta}{|\zeta|^2+1} \end{align}

となる。

(\ref{eq:cmplx_xy})の複素共役を取り足し引きすることで,$x,y$個別の表現

\begin{align} x= \frac{\zeta+\zeta^*}{|\zeta|^2+1}, \quad y= \frac{\zeta-\zeta^*}{i(|\zeta|^2+1)} \end{align}

も得られる。



参考文献


自然科学に関する質問やノート作りは『AfterSchool』で。