Reynolds数と相似則

Dr. SSS 2023/06/09 - 14:50:18 294 流体力学
はじめに

Reynolds数と乱流』ではReynolds数という重要なパラメータを導入した。 ここでは,Reynoldsについて簡単に(『Reynolds数と乱流』とは別の形で)触れなおした後,Reynolds数に関わる重要な法則である,Reynoldsの相似則について解説する。


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内容

Reynolds数

Navie-Stokes方程式は,移流項,圧力項,粘性項および外力の項からなるが,このうち速度場の状態に依存するのは最初の3項である。 粘性項は速度場の1次の項であるのに対し,移流項と圧力項は速度の2次関数である非線形項である。 線形項と非線形項の大きさは,それぞれだいたい$\nu U/L^2$と$U^2/L$である。 ここで,$U$および$L$は流れの特徴的な速さと長さで,$\nu$は運動学的粘性である。 その比は

\begin{equation} Re = \frac{UL}{\nu} \end{equation}

である。 この無次元量を,Reynolds数という。

無次元化

各流体要素を連続体とみなし,流体の運動方程式が適用できるスケールであれば,流れの状態を決めるのは,各物理量の絶対的な値ではなく,相対的な大きさである。 そのため,運動方程式を適当な基準量を用いて無次元化してしまうと便利なことが多い。 特に数値計算においては,無次元化は1つの基本的な操作となる。

ここで,基準量として流れの特徴的な長さ$L$(流体が流れる管の半径や,流れの障害物の幅など),典型的な速度の大きさ$U$および密度$\rho$を選ぶ。 すると

\begin{equation} \bm{v}=U\overline{\bm{v}}, \quad \bm{x}=L\overline{\bm{x}}, \quad p=\rho U^2 \overline{p} \end{equation}

によって,無次元化した速度$\overline{\bm{v}}$,位置$\overline{\bm{x}}$および圧力$\overline{p}$を導入できる。 さらに,時間についても$t=(L/U)\overline{t}$とする。 これに応じて,微分演算子も$\pd/\pd t = (U/L)\pd/\pd\overline{t}$および$\nabla = L^{-1}\overline{\nabla}$となることに注意しよう。 これらを用いると,Navie-Stokes方程式は

\begin{equation} \label{eq:normalized_navie-stokes_eq} \frac{\pd}{\pd \overline{t}}\overline{\bm{v}} + (\overline{\bm{v}}\cdot\overline{\nabla})\overline{\bm{v}} = -\nabla \overline{p} +\frac{1}{Re} \nabla^2 \overline{\bm{v}} \end{equation}

と無次元化される。



相似則

スケールに関わらず,同じReynolds数を持つ流れは同じ無次元化されたNavie-Stokes方程式(\ref{eq:normalized_navie-stokes_eq})を満たす。 また,速度$\overline{\bm{v}}$は,無次元化された位置とパラメータである$Re$によって決まるから,その解は$\overline{\bm{v}}=\overline{\bm{v}}( \overline{\bm{x}},R)$のように書けることがわかる。 実スケールに戻すには,これに基準量をかけ

\begin{equation} \bm{v}=U\overline{\bm{v}}(\overline{\bm{x}},R) \end{equation}

とすればよい。 このことから,例え大きさや速さが全然違う2つの流れでも,境界条件を含む幾何学的条件とReynolds数が一致すれば,スケールが異なるだけで同じ(相似な)流れとなることがわかる。 これを,Reynoldsの相似則(Reynolds' law of similarity)という。 この法則のおかげで,室内においても,大気や海洋のダイナミクスといった大きなスケールの流体現象に関する信頼性のある実験が可能となる。


参考文献