Introduction
特殊相対性理論の興味深い現象の代表例として挙げられる時間の遅れ。このことは,光速が不変であることを認めれば,比較的簡単な数式によって理解することができる。以下,このことを具体的に示す。
世界間隔
互いに一定の相対速度で運動する2つの慣性系
が成り立つ。
一方,同じ事象を
となる。
ここで,
これらの時間,空間幅を無限小に小さくとれば,(
と表せる。すなわち
固有時間
世界間隔の不変性から導ける興味深い性質の1つに,時間の遅れの現象がある。動いている時計を観察するシチュエーションを考えよう。静止した系からみると,時計は時間
から
とわかる。ここで
は静止系から見た動いている時計の速度なので(
と表せる。これを,静止系から見た時間間隔
と,運動する系に固定された時計が示す時間の経過を求めることができる。この時間を固有時間という。
時間の遅れ
(
しかし,ミューオンの固有時間を計算することで,光速に近い速さで運動するミューオンの寿命が地上に到達するのに十分な長さに伸びることがわかり,矛盾がないことが示される。