相対論的な速度の変換則

Dr. SSS 2019/08/31 - 20:18:11 相対性理論
はじめに

速度$V$で運動する宇宙船から速度$u$でロケットを発射した場合,宇宙船外部の静止した観測者から見た速度は非相対論的な合成則に基づけば$V+u$となるが,もし$V$が光速の60%,$u$が光速の50%であった場合,この規則に従うと,静止系から見たロケットの速度は光速を越えてしまう。

しかし,より厳密な相対論的合成則を用いれば,この推測は誤りであることがわかる。この記事では,異なる慣性系間の速度の変換と,速度の合成に関する規則を導き,速度をどれだけ合成しても光速$c$を超えることはできないということを説明する。


keywords: Albert Einstein, 特殊相対性理論, 相対性理論

内容

速度の変換

慣性系$K$系に対して,$x$方向に速度$V$で移動する別の慣性系$K'$系から見て

\begin{align} \label {Kpx} x' =& v_x' t' \\ \label {Kpy} y' =& v_y' t' \\ z' =& \text{const} \end{align}

の軌道を描いて運動する質点の速度を,$K$系の座標で表すことを考える。

(\ref{Kpx})を逆Lorentz変換すると

\begin{align} \label {eqx} x = \gamma (V + v_x')t' = \gamma^2 (V + v_x')\left(t - \frac{Vx}{c^2} \right) \\ \label {eqy} y = v_y' \gamma \left(t - \frac{Vx}{c^2} \right) \end{align}

となり,(\ref{eqx})を整理することで

\begin{align} x=\frac{v_x' + V}{1+\frac{v_x' V}{c^2}}t \end{align}

となるため,これを時間で微分することで,$K$系から見た$x$方向の速度の式

\begin{align} \label {vx} v_x \equiv \frac{dx}{dt}=\frac{x}{t}=\frac{v_x' + V}{1+\frac{v_x' V}{c^2}} \end{align}

が得られる。 また,これを(\ref{eqy})に入れることで軌道の$y$成分が

\begin{align} y = v_y' \gamma \left(1 - \frac{Vv_x}{c^2} \right)t = \frac{\sqrt{1-\beta^2}}{1+\frac{Vv_x}{c^2}}v_y't \end{align}

となり,これを時間で微分することで,$K$系から見た$y$方向の速度が

\begin{align} \label {vy} v_y \equiv \frac{dy}{dt} = \frac{\sqrt{1-\beta^2}}{1+\frac{Vv_x}{c^2}}v_y' \end{align}

となることがわかる。 (\ref{vx})および(\ref{vy})が,$K'$系で見た速度から$K$系で見た速度への変換である。




速度の合成則

$K$系から見て速度$V$で運動する宇宙船から,$V$と同方向に速度$v_x'$でロケットが発射されたとき,非相対論的な見方をすれば,$K$系から見たそのロケットの速度は$V+v_x'$となる。

もしも$V=v_x'=0.8c$であったとしたら,そのとき$K$系から見たロケットの速度は$1.6c$となり,光速を超えることになる。しかし,上で導いた変換則が示しているのは,その単純な速度の合成則が間違いであるということである。実際に今の例を(\ref{vx})に入れてみると

\begin{align} v_x = \frac{0.8c + 0.8c}{1+\frac{(0.8c)^2}{c^2}} =\frac{1.6c}{1+0.64} \simeq 0.976c \end{align}

となり,光速$c$は超えないということがわかる。

$V$,$v_x'$がともに$c$である場合に,それらを合成した結果もまた$c$となり,速度をどれだけ合成しても光速を超えることはできないということを示している。



参考文献


自然科学に関する質問やノート作りは『AfterSchool』で。