特殊相対論におけるLagrangianとHamiltonian

Dr. SSS 2019/08/18 - 09:28:41 相対性理論
はじめに

相対論的な粒子の運動を定式化するために,相対論的なLagrangianと作用およびHamiltonianを,発見的な方法で導く。


keywords: Albert Einstein, 特殊相対性理論, 相対性理論, 最小作用の原理, Lagrangian, Hamiltonian

内容

非相対論的Lagrangianとその問題

まず,復習として,非相対論的な自由粒子の場合を思い出してみると,Lagrangianは運動エネルギーで与えられる:

\begin{align} \label {nonrelL} L=\frac{1}{2}mv^2 \end{align}

しかしこのLagrangianから出てくる運動方程式はNewtonの運動方程式であって,相対論的な効果が含まれていないことは明らかである。

そこで,相対論的な効果を含んだ運動を記述するためには,別のLagrangianを見出す必要がある。 相対論的な自由粒子のLagrangianとしては,運動方程式が2階より高階の微分を含まないことに加え,Lorentz変換で不変であり,かつ非相対論的極限で(\ref{nonrelL})に帰着するものでないといけない。


発見的方法

さて,『固有時間と時間の遅れ』のところで,世界間隔$ds$は,座標の1階微分までを含むLorentz不変なスカラーであることを見た。 そのため,この量に作用の次元に合わせるためになんらかの定数$\alpha$をかけた

\begin{align} S=\alpha \int ds =\alpha c \int \sqrt {1-\frac{v^2}{c^2}} dt \end{align}

という形の作用を考えてみる(作用の次元から,$\alpha$は質量かける速さの次元でないといけない)。 すなわちこの場合のLagrangianは

\begin{align} L = \alpha c \sqrt {1-\frac{v^2}{c^2}} \end{align}

である。

そして,この量は

\begin{align} v/c \ll 1 \end{align}

において

\begin{align} \label {Lexp} L \simeq \alpha c \left(1-\frac{1}{2} \frac{v^{2}}{c^{2}}\right)= \alpha c -\frac{\alpha v^2}{2c} \end{align}

となり,$\alpha = -mc$と選ぶことで

\begin{align} L \simeq -mc^2 +\frac{mv^2}{2} \end{align}

と,確かに運動方程式に寄与しない定数項を除いて非相対論的なLagrangian (\ref{nonrelL})に一致することがわかる。




$E=mc^2$

すなわち,相対論的な自由粒子のLagrangianおよび作用はそれぞれ

\begin{align} L = mc^2 \sqrt {1-\frac{v^2}{c^2}} \end{align}

および

\begin{align} S = mc \int ds = mc^2 \int \sqrt {1-\frac{v^2}{c^2}} \end{align}

とすることが自然であることがわかった。 これらの関数の形がわかれば,後は非相対論的な場合と同様の手続きによって,相対論的な運動量

\begin{align} p_i=\frac{\partial L}{\partial v^i}= -m c^{2}\left(-\frac{v_i}{c^{2}}\right) \frac{1}{\sqrt{1-v^2 / c^2} } =\frac{m v_i}{\sqrt {1-v^2/c^2 }} \end{align}

および,それを用いてHamiltonian

\begin{align} \notag H=p_i v^i - L&=\frac{m v^{2}}{\sqrt {1-v^2/c^2 }}+mc^{2} \sqrt {1-\frac{v^2}{c^2}} \\ &= \frac{mc^2}{ \sqrt{1-v^2/c^2 }} \end{align}

が得られる。

Hamiltonianは相空間関数としての系の全エネルギーであるから,以下これを$E$と記そう。(\ref{Lexp})と同じように,このHamiltonianを$v/c$で展開することで

\begin{align} E = mc^2 + \frac{1}{2}mv^2 +... \end{align}

が得られ,非相対論的な極限で$mc^2$を除いて非相対論的な運動エネルギーと一致する。 また,$v=0$の場合は

\begin{align} E=mc^2 \end{align}

となり,良く知れた質量とエネルギーの等価性を示す関係式が得られる。


参考文献


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