Maxwell方程式の導出II:電磁場の回転

Dr. SSS 2018/12/06 - 12:58:50 電磁気学

Maxwell方程式は、大統領10人束ねたよりも大きな影響を人類の歴史に及ぼしてきた。―カール・セーガン

はじめに

ここでは,Maxwellの方程式のうち,場の回転に関する法則(微分形)

\begin{align} \notag \nabla\times \bm{E} =& -\frac{\pd \bm{B}}{\pd t} \\ \notag \nabla \times \bm{B} =& \mu_0 \left( \bm{j} +\varepsilon_0 \frac{\pd \bm{E}}{\pd t} \right) \end{align}

(および積分系)

\begin{align} \notag \oint_C \bm{E}\cdot d\bm{l} =&-\frac{\pd}{\pd t} \int_S \bm{B}\cdot d\bm{S} \\ \notag \oint_C \bm{B}\cdot d\bm{l} =& \mu_0 \int_S \left( \bm{j} +\varepsilon_0 \frac{\pd \bm{E}}{\pd t} \right) \cdot d\bm{S} \end{align}

を導く。


keywords: 電磁気学, Maxwell方程式, Ampèreの法則

内容

静的な電磁場の回転

静磁場のAmpèreの法則

まず,静的な電磁場で成り立つ法則を考える。 電荷同士の間に力が働いたように,電流同士の間にも力が働く。長さを無限とみなせるような長い直線電流$I_1$と$I_2$が平行に流れているとすると,互いの間に働く力の大きさは

\begin{align} F_{12} = \mu_0 \frac{I_1 I_2}{2\pi r} \end{align}

となることが経験的に確かめられていた。比例係数は後の便宜のために選択してあり,定数$\mu_0$は真空中の透磁率と呼ばれる。また$r$は電流間の距離であり,力の方向は電流の向きと垂直で,互いを結ぶ線に沿った方向となる。ただし,両方の電流が同じ向きに流れていれば引き合う向き,反対であれば退け合う向きに働く。

電場の場合と同様の考えから,この場合電流$I_1$によって作られる力を媒介する磁場の強さが

\begin{align} B = |\bm{B}|=\frac{\mu_0 I_1}{2\pi r} \end{align}

であると考えられる。磁場$\bm{B}$の向きは,電流$I_1$に垂直な平面内で,電流の流れる向きに右手の親指を置いて右ネジを回す方向で,閉じた円の形を描く(図1)。これを$I_1$を中心とする円周$C$に沿って積分すると

\begin{align} \label {amp int} \oint_C \bm{B}\cdot d\bm{l} = \mu_0 I_1 \end{align}

となる。ここで$d\bm{l}$は経路$C$の線素ベクトルである。(\ref{amp int})は静磁場のAmpèreの法則と呼ばれる。

実際は円周ではなく,任意の閉じた閉曲線を取ることができるが,Stokesの定理で説明したのと同様の考えから,経路が任意の形状をしていても限りなく微小な長方形の組み合わせで近似できるため,結論は同じになる。


図1:直線電流の作る磁場の向き。電流が画面に対して向こう側に流れているとき,磁場の力線は矢印の向きに円を描く。

(\ref{amp int})の左辺にはStokesの定理を,右辺の電流は電流密度$\bm{j}$を用いて

\begin{align} I = \int \bm{j}\cdot d\bm{S} \end{align}

と表せることを利用すれば,微分形

\begin{align} \label {amp diff} \nabla \times \bm{B} = \mu_0 \bm{j} \end{align}

が得られる。


電荷の連続の式

ここで,電荷の流れに関する連続の式を確認しておこう。 電荷$q$の体積当たりの密度を$\rho$,電流$I$の面積当たりの密度を$\bm{j}$とすると

\begin{align} \notag -\frac{\pd q}{\pd t} =& -\frac{\pd}{\pd t} \int_V \rho dV \\ =& \int_S \bm{j}\cdot d\bm{S}= I \end{align}

の関係が成り立つ。 これは,ある体積$V$から出ていく電荷の総量は,それを囲む閉面積$S$を貫く電荷の流れの総量と同じである,ということを示している。

$\bm{j}$の面積分にGaussの定理を使えば,連続の式

\begin{align} \label{conty} \frac{\pd}{\pd t}\rho + \nabla \cdot \bm{j}=0 \end{align}

が得られる。


静電場の回転の式

電場の場合も,電流を電荷に置き換えて同様に考えてみよう。静電場の力線は電荷を中心に放射状に描かれるため,電荷を囲むように円形の経路$C$に沿って電場を積分しようとすると,力線の方向は線素$d\bm{l}$と直交し積分の結果は

\begin{align} \oint_C \bm{E} \cdot d\bm{l} =0 \end{align}

となる(図2)。図の赤線のように力線に沿った方向に経路を迂回することもできるが,経路を閉じさせるためには,力線に沿って逆方向に戻る経路も加える必要があるため,結局力線に接な方向への積分は寄与しない。この場合もStokesの定理を使えば微分形

\begin{align} \nabla \times \bm{E}=0 \end{align}

が得られる。

図2:電荷$q$から延びる電気力線と,電荷を囲む積分の経路




時間変化する電磁場の回転

これまでMaxwellの方程式の導出Iの結果と合わせて,電磁場の発散と回転の4つの式のセットが得られたが,これだけでは十分ではない。 場が時間変化する場合の現象に対応するには,あと2つ加えなければならないことがある。


電磁誘導の法則

1つは,Faradayが見出した電磁誘導の法則である。彼が発見したのは,磁場が時間的に変化すると,そこに電流が発生するということ,つまり起電力が生じるということである。閉じた経路$C$の間を貫く磁場のフラックスを

\begin{align} \Phi_B =\int_S \bm{B}\cdot d\bm{S} \end{align}

とし,$C$を境界とする面を$S$とすると,電磁誘導の法則は

\begin{align} \oint_C \bm{E}\cdot d\bm{l} =-\frac{d\Phi_B}{dt}=- \int_S \frac{\pd \bm{B}}{\pd t}\cdot d\bm{S} \end{align}

と書き表される。右辺の負号は重要で,フラックスが減少している場合には誘導電流による磁場がフラックスの減少を妨げる方向に,フラックスが増加している場合には誘導電流による磁場がフラックスの増加を妨げる方向に,電場が誘導されるということを意味している(図3)。これにもStokesの定理を使うことで

\begin{align} \nabla\times \bm{E} = -\frac{\pd \bm{B}}{\pd t} \end{align}

と微分形が得られる。


図3:誘導電場の向き

電磁誘導については,コチラの記事でも個別に解説してある。


Ampèreの法則の一般形

もう1つは,電荷の保存則を満たすためにMaxwellがAmpèreの法則に対して行った拡張である。 式(\ref{amp diff})の発散を取ると

\begin{align} \nabla \cdot \nabla \times \bm{B} = \mu_0 \nabla \cdot \bm{j} \end{align}

となるが,左辺はベクトルの性質から恒等的にゼロとなる。 しかし,連続の式(\ref{conty})と比べると,電荷密度が時間変化している場合($\pd \rho/ \pd t \neq 0$)矛盾が生じてしまう。 よって,電荷の保存則を満たすためには,式(\ref{amp diff})は

\begin{align} \nabla \cdot \nabla \times \bm{B} = \mu_0 \left( \nabla \cdot \bm{j} +\frac{\pd\rho}{\pd t} \right) \end{align}

の形でなければならない。

電荷密度の時間変化は,Gaussの法則

\begin{align} \nabla\cdot\bm{E}=\frac{\rho}{\varepsilon_0} \end{align}

を用いて書き換えられるため,時間変化を含んだ場合も扱える,修正されたAmpèreの法則は最終的に

\begin{align} \nabla \times \bm{B} = \mu_0 \left( \bm{j} +\varepsilon_0 \frac{\pd \bm{E}}{\pd t} \right) \end{align}

と与えられる。こうして以下のようにMaxwell方程式がすべて得られた。

微分形:

\begin{align} \notag \nabla\cdot\bm{E}=&\frac{\rho}{\varepsilon_0} \\ \notag \nabla \cdot \bm{B}=&0 \\ \notag \nabla\times \bm{E} =& -\frac{\pd \bm{B}}{\pd t} \\ \notag \nabla \times \bm{B} =& \mu_0 \left( \bm{j} +\varepsilon_0 \frac{\pd \bm{E}}{\pd t} \right) \end{align}


積分形:

\begin{align} \notag \int_{S}^{\ } \bm{E} \cdot d\bm{S} =& \frac{q}{\varepsilon_0} \\ \notag \int_{S}^{\ } \bm{B} \cdot d\bm{S} =&0 \\ \notag \oint_C \bm{E}\cdot d\bm{l} =&- \int_S \frac{\pd\bm{B} }{\pd t} \cdot d\bm{S} \\ \notag \oint_C \bm{B}\cdot d\bm{l} =& \mu_0 \int_S \left( \bm{j} +\varepsilon_0 \frac{\pd \bm{E}}{\pd t} \right) \cdot d\bm{S} \end{align}


参考文献


自然科学に関する質問やノート作りは『AfterSchool』で。