我々はこれから,多数の荷電粒子からなるマクロな物体を扱う。 ここでは,こうした系を扱うために,適当な平均操作を施すことで,ミクロな場の方程式からマクロな場の方程式に移行する手続きを行う。
個々の電子や原子核を点粒子とみなしたとき,原子スケールのミクロな電磁場$\bm{e}$および$\bm{b}$はMaxwellの方程式
によって記述できる。
負電荷の担い手である電子は,導体中の電子のように自由に動き回れる自由電子(free electron)と,原子核の力により原子領域内に束縛された束縛電子(bound electron)に分けられる。 電離気体であれば,特定の位置には拘束されない自由な陽イオンも含まれる。 必要に応じて,このように電荷を束縛電荷(bound charge)とそれ以外の自由電荷(free charge)に分けて考えると見通しが良くなる。
自由電荷と束縛電荷の密度をそれぞれ$\rho_\text{bound}$とおよび$\rho_\text{free}$に記すと,全電荷密度はこれらの和で
と与えられる。 また,対応する電流密度も
と置ける。
単一の点電荷のみが存在する場合の電荷密度は
で与えられる。 ここで$\bm{x}_i$は電荷の位置で,$q_i$はその電荷量である。 $N$個の粒子からなる場合の電荷密度$\rho$は,和を取って
となる。 同様に,電流密度は
で与えられる。
これらを用いれば,多数の荷電粒子からなる系の厳密な電磁場が求められる。 しかし,我々がこれから扱うのは,数密度$10^{20} \mathrm{cm}^{-3}$を超える膨大な数の粒子からなるマクロな物体である。 各時刻でこれらすべての粒子の状態を知り,かつそこから必要な方程式をすべて解くということは事実上不可能である。 そもそも,我々が関心を持つマクロな現象において,そのように詳細な情報は不要でもある。
そこで,ミクロに見れば,そこに十分な粒子数を含むほど十分大きいが,マクロに見れば十分小さい空間領域を取り,我々が観測する量はそこで平均を取ったものであるとみなすことにする。 ミクロな揺らぎについても,観測に要する時間スケールで平均化してしまうことにする。 密度$\rho$を例にすると,この操作は,平均を取る体積と時間をそれぞれ$V$と$\tau$し,次のように表せる。
そして,この操作の結果得られる電磁場を
と表すことにする。
粗視化の操作については, コチラも参照。