Introduction
金属は,多数の自由電子を持つ。 このように自由に動ける電荷を持ち,電気を伝える物質を導体(conductor)という。 ここでは,導体の基本的な電気的性質を調べる。導体内部
導体を静電場
である場合には,導体内部の電場は外部駆動がなければゼロである。
エネルギーバランスの観点からもこの結論が得られる。
電磁場のエネルギー密度
となるが,内部に電場が存在すれば電流も存在し,したがって右辺の散逸項はゼロにならない。
したがって,何らかのエネルギー供給
ただし,これは導体が一様であると仮定した場合の話である。 例えば温度が不均一である場合
のように,電流は温度勾配によっても駆動されうる(
静電場がゼロということは,静電ポテンシャルが空間的に一様ということである。 また, Gaussの法則より導体中の任意の閉曲面内部に電荷は存在しない。 すなわち
であるから,導体内では電荷もゼロである。
まとめると,導体内では
が成り立つ。
導体表面
続いて,導体の表面の静電的性質について調べよう。 表面上の境界条件は,電場が静電的であるがゆえに
によって定められなくてはならない(任意のスカラーの勾配の回転はゼロ)。
また,上述の性質より,導体中では,電荷はその表面に分布することになる。
よって,
と表せる。
ここで
改めて,我々はマクロな現象を扱うために,様々な理想化された記述を用いていることに注意しよう。
(
がゼロであるためには,
垂直成分は,Gaussの法則
によって決定できる。
導体表面の両側から無限小離れた位置に面を取り,それらをつないでできる微小な円柱領域を考え,Gaussの法則を適用すると,(
となり
が得られる。
ここで,
導体の静電場のエネルギー
帯電した導体の電場のエネルギーは
で与えられる。 ここで,積分は導体外部の空間全体で取られる。 これを
と変形する。
右辺2項目は,導体外部では電荷がないことによりゼロである。 右辺1項目は,電場は面に垂直な成分しか持たないことから
と変形できる。
ここで,積分
となる。
導体表面は等電位面であったことから,
となる。
References
――(1982). 電磁気学 (ランダウ=リフシッツ理論物理学教程) 1 & 2. 井上健男ほか訳. 東京図書.