$SU(2)$のLie代数と既約表現

Dr. SSS 2021/07/17 - 10:33:46 群論
はじめに

ここでは,2次の特殊ユニタリ群$SU(2)$のLie代数について考える。 これは,特殊線形群のうち,ユニタリ行列からなる群のこと,すなわち$2\times 2$のユニタリ行列で,行列式が$1$であるものの集合

\begin{align} SU(2)=\{ U \in M(2,C) \ | \ \det{U}=1, \ UU^\dagger=U^\dagger U=1\} \end{align}

のことである($M(2,C)$は2次の複素正方行列の集合)。


keywords: 代数学, Lie群, 群の表現, Lie代数, 固有値, 固有値問題, 固有ベクトル, 対角化

内容

自由度

$2\times 2$の複素行列は,$2\times2=4$つの成分を持ち,各成分が複素数であるためその倍$4\times 2=8$の自由度がある。 しかし,ユニタリ条件

\begin{align} \label{eq:unitary_matrix} U^\dagger U= UU^\dagger =1 \end{align}

が成分1つずつに条件を課すから,自由度は$8-4=4$に減る。 さらに,$\det U=1$の条件が自由度を1つ減らすから,結局$SU(2)$の自由度は$4-1=3$となる。

行列$U$を

\begin{align} U=e^{iX}=e^{i\sum_{i=1}^3 t_i X_i } \end{align}

と表すと,(\ref{eq:unitary_matrix})より

\begin{align} X^\dagger =X \end{align}

となる。 すなわち,ユニタリ群の生成元はエルミートである。

また,$SU$の場合は

\begin{align} \det U = \exp[\tr(iX)]=1 \end{align}

より,$X$がトレースレスである条件

\begin{align} \tr(X)=0 \end{align}

が加わる。


Lie代数

上述の条件を満たす生成子の基底として

\begin{align} X_i = J_i=\frac{1}{2}\sigma_i, \ (i=1,2,3) \end{align}

が選べる。 ここで

\begin{align} \sigma_1 = \left( \begin{array}{cc} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{array} \right),\ \sigma_2 = \left( \begin{array}{cc} 0 & -i \\ i & 0 \end{array} \right),\ \sigma_3 = \left( \begin{array}{cc} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{array} \right) \end{align}

であり,交換関係は

\begin{align} \label{eq:SU2_LieBracket} [J_i,J_j]=i\sum_k \ep_{ijk}J_k \end{align}

となる。


Cartan部分代数

(\ref{eq:SU2_LieBracket})より,$\frg=\frsu(2)$の可換な元は$J_i$それ自身のみであるから,Cartan部分代数の階数は1になる。 これを$H=J_3$と選ぼう。 すなわち,$\frh=\{J_3 \}$である。

このとき,(\ref{eq:SU2_LieBracket})より$H=J_3$の随伴表現は

\begin{align} \ad(J_3) =\left( \begin{array}{ccc} 0 & i & 0 \\ -i & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{array} \right) \end{align}

で与えられ,固有方程式は

\begin{align} \det(\ad(J_3)-\alpha I) = \alpha(\alpha^2-1)=0 \end{align}

となるから,ウェイトは$\alpha=\pm 1$となる。 このように$\frh^*$も1次元になるが,便宜のために添え字をつけて$\alpha_3$と表すようにしよう。

$\pm\alpha_3$に対応する固有ベクトル$E_{\pm\alpha}$はそれぞれ

\begin{align} E_{\pm}=\frac{1}{2}(J_1\pm i J_2) \end{align}

によって構成できる。 これらは交換関係

\begin{align} [J_3,J_\pm]=\pm J_\pm, \quad [E_+,E_-]=\frac{J_3}{2} \end{align}

を満たす。 ここで

\begin{align} J_{\pm}\equiv \sqrt{2} E_{\pm} \end{align}

と規格化しなおせば,標準基底の交換関係

\begin{align} [J_3,J_\pm]=\pm J_\pm, \quad [J_+,J_-]=J_3 \end{align}

を満たすようにできる。




最高ウェイト

関係

\begin{align} \frac{2(\alpha_i,\mu_j)}{(\alpha_i,\alpha_i)} = \delta_{ij} \end{align}

を用いて基本ウェイトを求めよう。 今のケースでは1成分しかないから,対応する式は

\begin{align} \frac{2(\alpha_3,\mu_3)}{(\alpha_3,\alpha_3)} = 1 \end{align}

である。

Cartan計量は

\begin{align} g_{33} =&\tr(\ad(J_3)\ad(J_3)) = \tr \left( \begin{array}{ccc} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{array} \right) = 2 \end{align}

と求められるから,この逆は

\begin{align} g^{33} =& (g_{33})^{-1}=\frac{1}{2} \end{align}

となり

\begin{align} (\alpha_3,\alpha_3) = g^{33}\alpha_3 \alpha_3 =\frac{1}{2} \end{align}

とわかる。

これより

\begin{align} \frac{2(\mu,\alpha)}{(\alpha,\alpha)} = \frac{2g^{33}\mu_3 \alpha_3}{g^{33}\alpha_3 \alpha_3} = 2\alpha_3\mu_3=1 \end{align}

であるから,基本ウェイト$\mu_3$が

\begin{align} \mu_3=\frac{1}{2} \end{align}

と求まる。

すなわち,基本表現の最高ウェイトは$1/2$であり,任意の最高ウェイトはこれに0以上の整数をかけたものであるから,それを$j$と記すと,$j$の値は

\begin{align} j = n/2, \ n=0,1,2,3,... \end{align}

に限られる。

基本表現$n=1(j=1/2)$の場合は最高ウェイトに対応する状態$|j\rangle$に下降演算子$J_-$を1回作用すると最低ウェイト$j-1=-1/2$が得られて,$n=2(j=1)$の場合は2回作用することで$j-2=-1$が得られる。 すなわち,一般に最高ウェイト状態に$J_-$を$n$回作用すると,最低ウェイト$j-n=-j$が得られる。 これよりウェイトの総数が$2j+1$個であるとわかり,この数が既約表現の次元となる。


昇降演算子の行列要素

今考えているケースでは,昇降演算

\begin{align} J_{\pm}|m\rangle =\sqrt 2 N_{\pm \alpha_3,m}|m\pm1\rangle \end{align}

に現れる係数,すなわち昇降演算子$J_\pm$の行列要素$N_{\alpha_3,m}$を与える公式

\begin{align} |N_{\alpha_3,m}|^2 =p(q+1)\frac{(\alpha_3,\alpha_3)}{2} = \frac{1}{4}p(q+1) \end{align}

であり

\begin{align} m+p\alpha_3=j, \ m-q\alpha_3=-j \end{align}

より

\begin{align} |N_{\alpha_3,m}|^2 = \frac{1}{4}(j-m)(j+m+1) \end{align}

である。


参考文献


自然科学に関する質問やノート作りは『AfterSchool』で。