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    放射測定量

    Dr. SSS 2020/07/24 - 10:34:32 930 気候物理
    はじめに

    気候システムにおいては,放射に関係するプロセスが非常に重要になるが,関心のある対象によって,以下のような互いに似ているが異なる量を扱うため,それぞれ混同しないように注意する必要がある。


    keywords: 大気物理学, 放射, 電磁波


    放射輝度

    点$\bm{r}$を中心とする微小面$dS$上から,$\nu$と$\nu+d\nu$の間の振動数を持つ放射によって,単位ベクトル$\bm{s}$の方向に時間$dt$の間に運ばれるエネルギーを$dE$としたとき

    \begin{align} dE_\nu =L_\nu (\bm{r},\bm{s}) \cos{\theta} dS d\Omega dt d\nu \end{align}

    で定義される$L_\nu (\bm{r},\bm{s})$を,スペクトル放射輝度(spectral radiance)あるいは単色放射輝度(monochromatic radiance)と呼ぶ。 ここで,$\theta$は面$dS$の法線$\bm{n}$と$\bm{s}$のなす角である(図1)。

    これは,特定の振動数を持った光子によって,$\bm{s}$の方向に単位面積当たり,単位立体角当たりに運ばれる仕事率に対応しており,${\rm Wm}^{-2}{\rm sr}^{-1}{\rm Hz}^{-1}$の次元を持つ。 著者や文献によっては,スペクトル輝度のことを,スペクトル放射強度(spectral radiation intensity)と呼ぶことも多いが,別の量を指して強度と呼ぶこともあるため,混同しないように注意が必要である。

    スペクトル輝度を振動数について積分したもの

    \begin{align} L (\bm{r},\bm{s}) = \int_0^\infty d\nu L_\nu (\bm{r},\bm{s}) \end{align}

    を,放射輝度(radiance)あるいは放射強度(radiation intensity)と呼ぶ。

    図1:点$\bm{r}$を中心とする半球




    放射照度

    スペクトル放射輝度の法線成分を半球に渡って積分したもの

    \begin{align} F_\nu \equiv \int_\text{半球} L_\nu (\bm{r},\bm{s}) \cos{\theta}d\Omega \end{align}

    を,スペクトル放射照度(spectral irradiance)あるいは単色放射照度(monochromatic irradiance)と呼ぶ。

    立体角要素は

    \begin{align} d\Omega=\sin{\theta}d\theta d\phi \end{align}

    であるから,法線方向に正の側の半球に渡る積分とは

    \begin{align} F_\nu =\int_0^{2\pi} d\phi \int_0^{\pi/2} L_\nu (\bm{r},\bm{s}) \cos{\theta} \sin{\theta}d\theta \end{align}

    である。

    スペクトル照度を振動数で積分したもの

    \begin{align} F\equiv \int_0^\infty d\nu F_\nu \end{align}

    を,放射照度(irradiance)という。 この量は,単位面積当たりの仕事率の次元${\rm Wm}^{-2}$を持つ。

    法線$\bm{n}$の方向をの照射を$F(\bm{r},\bm{n})=F^\uparrow$,反対方向の照射を$F(\bm{r},-\bm{n})=F^\downarrow$とすると,法線方向への正味の面積当たりの仕事率は

    \begin{align} F=F^\uparrow-F^\downarrow \end{align}

    で求められる。



    参考文献