放射伝達方程式

Dr. SSS 2020/07/28 - 11:31:51 気候物理
はじめに

ここでは,大気中を伝播する過程の放射エネルギーの変化率を表す放射伝達方程式を紹介する。


keywords: 散乱, 放射, 大気物理学

内容

Lambert-Bouguer-Beer法則

放射強度(輝度)$L_\nu$は,大気中を伝達する過程で,大気分子による吸収や散乱によって変化する。 この過程の詳細は複雑なのだが,輝度の変化の様子はLambert-Bouguer-Beer法則にまとめあげることができる。 この法則は,吸収及び散乱による輝度の減衰は,$L_\nu$と,吸収あるいは散乱を起こす気体の密度$\rho_a$に比例することを述べる。

つまり,微小立体角$d\Omega$で,単位断面積を持つ気柱を進む放射を考えたとき,気柱の中を$ds$の長さ進む間に,吸収や散乱によって起こる輝度$L_\nu$の減衰は

\begin{align} \label {eq:dLnu} dL_\nu = -k_\nu(s)\rho_a(s)L_\nu(s)ds \end{align}

と書ける。 ここで,$k_\nu$は消散係数(extinction coefficient)と呼ばれ,吸収係数$a_\nu$と,散乱係数$s_\nu$の和

\begin{align} k_\nu=a_\nu+s_\nu \end{align}

で与えられる。

(\ref{eq:dLnu})より得られる微分方程式

\begin{align} \label{eq:dLds} \frac{dL_\nu}{ds} = -k_\nu(s)\rho_a(s)L_\nu(s) \end{align}

の解は容易に得られ

\begin{align} L_\nu(s) = L_\nu(0) \exp{\left[-\int_0^s ds' k_\nu(s')\rho_a(s')\right]} \end{align}

となる。




放射伝達方程式

気体が,吸収や散乱だけでなく,光子の放出により放射を増強する場合,(\ref{eq:dLds})には対応するソース項が加わる。 ソース項を,放射源関数(source function)$J_\nu$を用いて$k_\nu(s)\rho_a(s)J_\nu(s)ds$と置けば

\begin{align} \frac{dL_\nu}{ds} = -(L_\nu-J_\nu) k_\nu\rho_a \end{align}

が得られる。 これを放射伝達方程式(radiative transfer equation)という。



参考文献


自然科学に関する質問やノート作りは『AfterSchool』で。