内容

    内部、境界、閉包

    Dr. SSS 2020/12/20 - 16:43:03 6744 位相幾何学
    はじめに

    距離空間と位相』では,距離空間$X$の部分集合$A$内の点列のすべての極限(集積点)が,$A$の内部に含まれるかどうか,すなわち極限に関して閉じているかどうかによって,開集合および閉集合という概念が定義されることを説明した。 ここでは,その集合の「内部」や「境界」などといった概念にも形式的な定義を与え,開集合,閉集合との関係を見る。


    keywords: 集合論, 位相空間, 距離空間, 幾何学

    内部,境界,閉包の定義

    トップ画は,以下で紹介する概念のいくつかに関するイメージになっているため,その都度参照しながら読み進めてもらいたい。

    内点と内部

    $X$を距離空間,$A$をその部分集合とする。 $X$の点$x$が$U \subset A$となる近傍$U$を持つとき,$x$を$A$の内点(interior point)という。 そして,$A$の内点全体の集合を$A$の内部(interior)と呼び,$\text{Int} A$と表す。


    触点と閉包

    また,任意の近傍$U$に対して

    \begin{align} \label{eq:def_adh_point} U \cap A \neq \emptyset \end{align}

    となる点,すなわちどんなに小さな近傍を取っても,$A$の点を含んでしまうような点$x$を,$A$の触点(adherent point)という。 そして,$A$の触点全体を,$A$の閉包(closure)といい,$\bar{A}$で表す。

    触点と良く似た概念として集積点というものがあったが,$A \subset X$の集積点とは,$x$の任意の近傍$U$が$x$以外の$A$の点を含むもの,すなわち

    \begin{align} \label{eq:def_accum_point} U\cap A-\{x\}\neq \emptyset \end{align}

    となる$x\in X$と定義されていたため,異なる概念である。 実際,(\ref{eq:def_accum_point})が成り立てば(\ref{eq:def_adh_point})も成り立つため,集積点であれば触点でもあるが,部分集合として1点$x\in X$だけからなるような集合$A=\{x\}$を考えると,(\ref{eq:def_adh_point})は成り立つが(\ref{eq:def_accum_point})は成り立たないため,触点であるからといって集積点でもあるとは言えない。 この例のように,$A$の点であるが$A$の集積点とはならない点を,$A$の孤立点(isolated point)という。

    定義の通り,その近傍が$A$と共通部分を持っていればいいので,触点自体が内部に含まれている必要はなく,$\bar{A}$から$A$の内部を取り除いた $$ \pd A\equiv \bar{A}-\text{Int} A $$ を$A$の境界(boundary)と呼ぶ。


    包含関係

    定義からわかるように,$A$とその内部および閉包との間には

    \begin{align} \label{eq:A_rel} \text{Int} A \subset A \subset \bar{A} \end{align}

    という包含関係が成り立つ。




    開集合と閉集合の定義

    近傍と開集合

    境界という概念を用いて,開集合と閉集合が次のように定義される:

    $X$を距離空間,$A$をその部分集合とする。 $A$がその境界$\pd A$を含むとき,すなわち$\pd A \subset A$のとき,$A$を$X$の閉集合という。 他方,$A$がその境界との共通部分を持たないとき,すなわち$A\cap \pd A =\emptyset$のとき,$A$を$X$の開集合という。

    (\ref{eq:A_rel})の関係で見ると,$\text{Int}A = A$が成り立つものが開集合,$A= \bar{A}$が成り立つのが閉集合である。



    参考文献