距離空間の間の連続写像

Dr. SSS 2020/12/23 - 16:23:17 位相幾何学
はじめに

ここでは,距離空間の間の連続写像について説明する。 はじめに,最も直感的と思われる表現を与え,それに続いて,いくつかの同値だが異なる表現と,それらの間の関係を解説する。


keywords: 集合論, 距離空間, 位相空間, 写像, 連続性

内容

極限と連続性

まず,最も直感的と思われる定義を与えよう。

定義 :距離空間$X$から別の距離空間$Y$への写像$f:X\to Y$を考える。 写像$f$が,$X$の任意の点列$\{x_n\}$に対して

\begin{align} \lim_{n\to \infty}x_n\to x \quad \text{ならば} \quad \notag \\ \label{eq:limit_x} \lim_{n\to \infty}f(x_n)\to f(x) \end{align}

を満たすとき,$f$を連続写像(continuous map)という。

(\ref{eq:limit_x})における$x$のような点列の極限というのは,近傍という概念を用いて定義されるのであった。 よって,写像の連続性についても,同様の観点から記述できることが期待される。


近傍を用いた表現

実際,(\ref{eq:limit_x})は次のことと同値である:

$f(x)$の任意の$\varepsilon$-近傍$U_\varepsilon(f(x))$,に対し,適当な正数$\delta$を取ると

\begin{align} \label{eq:map_neigboor} f(U_\delta (x)) \subset U_\varepsilon(f(x)) \end{align}

が成り立つ。

これは,$X$の任意の点$x$に対して,その近傍$U_\delta (x)$を取ると,$U_\delta (x)$に含まれる任意の別の点$x'$の像$f(x')$が,$f(x)$の近傍$U_\varepsilon(f(x))$の内部に含まれるということを言っている(トップ画参照)。

proof   (\ref{eq:limit_x})ならば(\ref{eq:map_neigboor})を証明するために,(\ref{eq:map_neigboor})が成り立たない場合,すなわち

\begin{align} \label{eq:anti} f(U_\delta (x)) \not\subset U_\varepsilon(f(x)) \end{align}

を仮定して考えてみる。

  1. 自然数$n$に対して$\delta=1/n$と取ると,(\ref{eq:anti})が成り立つということは,ある$n$において

    \begin{align} x_n \in U_{1/n}\quad \text{かつ} \quad f(x_n) \not\subset U_\varepsilon(f(x_n)) \end{align}

    となる点$x_n$が存在するということである。

  2. つまり

    \begin{align} d(x,x_n) < 1/n \quad \text{かつ} \quad d(f(x),f(x_n))\geq \varepsilon \end{align}

    となる$\varepsilon>0$が存在するということである

  3. しかし,これは,$n\to \infty$の極限を取ったとき,$d(x_n,x)\to 0$ならば,$d(f(x_n),f(x))\to 0$であるという連続写像の定義(\ref{eq:limit_x})に反する。
  4. よって,(\ref{eq:limit_x})ならば(\ref{eq:map_neigboor})と言える。

次に,(\ref{eq:map_neigboor})ならば(\ref{eq:limit_x})を示そう。

  1. $\lim_{n\to \infty} x_n \to x$となる$X$の任意の点列を取ると,(\ref{eq:map_neigboor})は任意の正数$\varepsilon$に対し

    \begin{align} d(x,x_n) < \delta \quad \text{ならば} \quad d(f(x),f(x_n)) < \varepsilon \end{align}

    となる正数$\delta$が決まるということを示している。

  2. $\lim_{n\to \infty} x_n \to x$とは,ある数$k$に対して

    \begin{align} k < n \quad \text{ならば} \quad x_n \in U_\delta(x) \end{align}

    となるということであるから

    \begin{align} k < n \quad \text{ならば} \quad f(x_n) \in U_\varepsilon(f(x)) \end{align}

    が成り立つ。

  3. $\varepsilon$の取り方は任意であったから,これは$\lim_{n\to \infty} f(x_n) \to f(x)$が成り立つことを示している。
  4. よって,(\ref{eq:map_neigboor})ならば(\ref{eq:limit_x})である。



$\varepsilon$-$\delta$論法

上の議論は,$X=Y=R$であるとき,$x=a$で$f$が連続なら,任意の正数$\varepsilon$に対して,ある正数$\delta$が存在し

\begin{align} |x-a|<\delta \quad \text{ならば} \quad |f(x)-f(a)| <\varepsilon \end{align}

が成り立つ,といういわゆる$\varepsilon$-$\delta$論法に対応している。


開集合・閉集合を用いた表現

距離空間$X$から別の距離空間$Y$への写像$f$が連続であるということは,次のこととも同値である:

  1. $Y$の任意の開集合$V$に対し,$f^{-1}(V)$は$X$の開集合である。
  2. $Y$の任意の閉集合$W$に対し,$f^{-1}(W)$は$X$の閉集合である。

proof   (\ref{eq:limit_x})ならば(i)を示す。

  1. $Y$の任意の開集合$V$に対し,$x \in f^{-1}(V)$とする。 $f(x)\in V$で,$V$は開集合であるから, $$ U_\varepsilon(f(x)) \subset V $$ となる近傍$U_\varepsilon(f(x))$が存在する。
  2. このとき,連続性の定義より,ある正数$\delta$が存在し, $$ f(U_\delta(x))\subset U_\varepsilon(f(x)) $$ が成り立つ。
  3. したがって $$ f(U_\delta(x))\subset V $$ となる。
  4. これは

    \begin{align} U_\delta(x)\subset f^{-1}(V) \end{align}

    と表すこともできるが,$x$は$f^{-1}(V)$内の任意の点であったから,$f^{-1}(V)$は開集合であるとわかる。

  5. よって,(\ref{eq:limit_x})ならば(i)である。

続いて,(i)ならば(\ref{eq:limit_x})を示す。

  1. 任意の$x\in X$に対し,$V$を$f(x)$の近傍$V=U_\varepsilon(f(x))$とする。
  2. 仮定より,$f^{-1}(V)$は開集合であるから,適当な正数$\delta$を取ると $$ U_\delta(x) \subset f^{-1}(V) $$ となる。
  3. よって,$f(U_\delta(x)) \subset V$,すなわち $$ f(U_\delta(x)) \subset U_\varepsilon(f(x)) $$ が成り立つ。

最後に,(i)と(ii)が同値であることを示す。

  1. 閉集合$W\subset Y$の補集合$Y-W$は$Y$の開集合であるから,(i)より$X-f^{-1}(W)=f^{-1}(Y-W)$は$X$の開集合である。
  2. よって,$f^{-1}(W)$は閉集合である。
  3. 反対に,開集合$V\subset Y$の補集合$Y-V$は$Y$の閉集合であるから,(ii) より$X-f^{-1}(V)=f^{-1}(Y-V)$は$X$の閉集合である。
  4. よって,$f^{-1}(V)$は開集合である。
  5. これより,(i)であれば(ii)も,(ii)であれば(i)も成り立つ。


参考文献


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