実数の連続性

Dr. SSS 2020/12/27 - 17:05:53 673 位相幾何学
はじめに

ここでは,実数の連続性と,関連するいくつかの実数の基本的性質について説明する。


keywords: Euclid空間, 位相空間, 実数

内容

実数の連続性

$R$の部分集合$X$の任意の元$x$が,$R$のある元$b$について$x \leq b$を満たすとき,$X$は上に有界(bounded above)であるといい,このような$b$を$X$の上界(upper bound)という。 同様に,任意の$x\in X$について$x \geq a$なる$a \in R$があるとき,$X$は下に有界(bounded below)であるといい,このような$a$を$X$の下界(lower bound)という。

例えば,閉区間$[0,1]$を考えると,$1$以上の実数はすべて上界であり,$0$以下の実数はすべて下界である。 そのうち,$1$は上界全体の中で最小で,$0$は下界全体の中で最大となる。 これらの数をそれぞれ,$[0,1]$の上限および下限という。

一般に,$X \subset R$の上界全体からなる$R$の部分集合に最小元$b_0 \in R$があるとき,この$b_0$を$X$の上限(supremum)といい

\begin{align} b_0 = \sup X \end{align}

と表す。 同様に,$X$の下界全体からなる$R$の部分集合に最大元$a_0 \in R$があるとき,この$a_0$を$X$の下限(infimum)といい

\begin{align} a_0 = \inf X \end{align}

と表す。

これらの概念に関する次の公理を実数の連続性(continuity of real numbers)という。

空でない$R$の上に(下に)有界な部分集合は上限(下限)を持つ。




縮小区間定理

縮小区間定理(nested intervals theorem): $[a_{n+1},b_{n+1}]\subset [a_n,b_n]$となる$R$内の有界閉区間の集まり$\{[a_n,b_n]\ | \ n\in N \}$に対し,すべての閉区間に共通のただ1つの実数$c$が存在する:$\bigcap_{n=1}^\infty [a_n,b_n]=\{c\}$。

proof:  

  1. $\{[a_n,b_n]\ | \ n\in N \}$の構造より

    \begin{align} \notag a_1 \leq a_2 \leq ... \leq a_n \leq ... \leq b_n \leq ... \leq b_2 \leq b_1 \end{align}

    という不等式が成り立つ。

  2. 実数列$\{a_n\}$は上に有界な単調増加列,$\{b_n\}$は下に有界な単調減少列であるため,それぞれ上限$\alpha$と下限$\beta$に 収束する。
  3. これらは任意の$n$について $$ a_n \leq \alpha \leq \beta \leq b_n $$ を満たすため $$ \bigcap_{n=1}^\infty [a_n,b_n]\neq \emptyset $$ が言える。
  4. 他方,$\lim_{n\to \infty}(a_n-b_n)=0$であるから,実数列$\{a_n\}, \{b_n\}$はともに同じ実数,$c$と記す,に収束する。
  5. よって $$ \alpha=\beta=c $$ であり $$ \bigcap_{n=1}^\infty [a_n,b_n]= c $$ が成り立つ。



参考文献