第二量子化II:フェルミオンのケース

Dr. SSS 2020/06/02 - 10:51:29 量子力学
はじめに

この記事では,フェルミオンの第二量子化について説明する。ボゾンのケースについての項に目を通していることを前提とするため,そちらで説明したことを改めて詳しく説明しなおすことはしない。


keywords: 量子力学, 場の量子論, 生成消滅演算子, フェルミオン

内容

粒子の入れ替え

フェルミオンの場合,粒子交換について反対称であるため,少し取り扱いが変ってくる。 例えば,状態$1$から$i-1$まで粒子が詰まっているが,それ以降の状態を占有する粒子はいない状態を考える。 このときの状態は

\begin{align} |1_1,1_2,...,1_{i-1},0_i,0_{i+1},...\rangle = \hat{a}^\dagger_1 \hat{a}^\dagger_2...\hat{a}^\dagger_{i-1} |0\rangle \end{align}

と書ける。 そして,これに$\hat{a}^\dagger_i$を演算した結果は

\begin{align} \hat{a}^\dagger_i \hat{a}^\dagger_1 \hat{a}^\dagger_2...\hat{a}^\dagger_{i-1} |0\rangle = |1_i, 1_1,1_2,...1_{i-1},0_{i+1},...\rangle \end{align}

である。 状態数のラベル順に表すためには,$i-1$回の入れ替えをする必要があるため,入れ替えごとに$-1$がかかり

\begin{align} \label {perm} \hat{a}^\dagger_i \hat{a}^\dagger_1 \hat{a}^\dagger_2...\hat{a}^\dagger_{i-1} |0\rangle = (-1)^{i-1} |1_1,1_2,...,1_{i-1},1_i,0_{i+1},...\rangle \end{align}

となる。 では,状態$1$から$i-1$の間にも,占有されていない状態がある場合はどうか。 この場合,必要な入れ替えの回数は,(\ref{perm})の場合のより空いている状態の数だけ少なくなる。 この必要な回数を一般的な形に表すのに,フェルミオンの占有数$N_i$は$0$か$1$しかとりえないという性質が有用になる。

\begin{align} \label {sumN} \sum (i,j) \equiv \sum_{n=i}^{j} N_n \end{align}

という和を定義し

\begin{align} \sum (1,i-1) = \sum_{n=1}^{i-1} N_n \end{align}

という和をとってやれば,$1$から$i-1$番目の状態のうちで,占有されている状態の数が与えられる。よって,(\ref{perm})を一般化した表現として

\begin{align} \label {-1rel} \hat{a}^\dagger_i |0_i \rangle = (-1)^{\sum (1,i-1)} |1_i \rangle \end{align}

が得られる。 (\ref{sumN})は,$i=j, \ j\pm1$のときは,$0$であるとする。

(\ref{-1rel})に左から$\langle 1_i|$をかけると

\begin{align} \langle 1_i| \hat{a}^\dagger_i |0_i \rangle = \langle 0_i| \hat{a}_i |1_i \rangle = (-1)^{\sum (1,i-1)} \end{align}

となる。 ここで,$i$とは別の状態$k(>i)$も陽に表しておこう。 すると上の式の再左辺は

\begin{align} \langle 1_i, 0_k| \hat{a}^\dagger_i |0_i,0_k \rangle = (-1)^{\sum (1,i-1)} \end{align}

と表せる。 真ん中も同様にしつつ,ラベルを入れ替えて

\begin{align} \langle 0_i, 0_k| \hat{a}_k |0_i, 1_k \rangle = (-1)^{\sum (1,i-1) + \sum(i+1,k-1)} \end{align}

とできる。 交換回数の数え方は,$1$から$i-1$まで数えて,$i$は$0$なので飛ばして,また$i+1$から$k-1$まで数えている。 そしてこれらをかけわせることで

\begin{align} \label {Nop1} \langle 1_i, 0_k| \hat{a}^\dagger_i \hat{a}_k |0_i, 1_k \rangle = \langle 1_i, 0_k| \hat{a}^\dagger_i |0_i,0_k \rangle \langle 0_i, 0_k| \hat{a}_k |0_i, 1_k \rangle = (-1)^{\sum(i+1,k-1)} \end{align}

の関係が得られる。 $i=k$の場合,(\ref{Nop1})は

\begin{align} \langle N_i| \hat{a}^\dagger_i \hat{a}_i |N_i \rangle =\left \{ \begin{array}{ll} 0 & \text{if} \ \ N_1=0 \\ 1 & \text{if} \ \ N_1=1 \end{array} \right. \end{align}

であるため,フェルミオンの場合も$\hat{a}^\dagger_i \hat{a}_i$は数演算子$\hat{N}_i$とみなせる。




交換関係

今度は

\begin{align} \langle 1_i, 1_k| \hat{a}^\dagger_i |0_i,1_k \rangle = (-1)^{\sum (1,i-1)} \end{align}

\begin{align} \langle 1_i, 0_k| \hat{a}_k |1_i, 1_k \rangle = (-1)^{\sum (1,i-1) +1+ \sum(i+1,k-1)} \end{align}

という行列を考える。 2つ目の式は,$i$の占有数が$0$でない分が$-1$のべき数に数え上げられていることに注意しよう。 今度はこれらを逆の順番でかけあわせると

\begin{align} \langle 1_i, 0_k| \hat{a}_k \hat{a}^\dagger_i |0_i,1_k \rangle =& \langle 1_i, 0_k| \hat{a}_k |1_i, 1_k \rangle \langle 1_i, 1_k| \hat{a}^\dagger_i |0_i,1_k \rangle \notag \\ =& (-1)^{\sum(i+1,k-1)+1} \notag \\ \label {Nop2} =&-(-1)^{\sum(i+1,k-1)} \end{align}

が得られる。 これと(\ref{Nop1})を足し合わせることで,$i\neq k$の場合において

\begin{align} \hat{a}_k \hat{a}^\dagger_i + \hat{a}^\dagger_i \hat{a}_k = 0 \end{align}

が成り立つことがわかる。 一方,$i=k$の場合(\ref{Nop2})は

\begin{align} \langle N_i| \hat{a}_i \hat{a}^\dagger_i |N_i \rangle =\left \{ \begin{array}{ll} 0 & \text{if} \ \ N_1=1 \\ 1 & \text{if} \ \ N_1=0 \end{array} \right. \end{align}

であるから

\begin{align} \hat{a}_i \hat{a}^\dagger_i = 1 -\hat{N}_i \end{align}

と表せる。 これらから,フェルミオンの生成消滅演算子の交換関係は

\begin{align}

\{ \hat{a}_i \hat{a}^\dagger_j \} \equiv \hat{a}_i \hat{a}^\dagger_j + \hat{a}^\dagger_j \hat{a}_i = \delta_{ij} \end{align}

であることがわかる。 通常の交換関係のように,順番を入れ替えたものを引くのではなく,足すことで定義されるこのような関係を,反交換関係という。


場の演算子

生成消滅演算子が反交換関係を満たすことより,場の演算子

\begin{align} \label {fieldOP} \hat{\psi}(\xi) = \sum_i \hat{a}_i \psi_i(\xi), \ \ \hat{\psi}^\dagger(\xi) = \sum_i \hat{a}^\dagger_i \psi^*_i(\xi) \end{align}

を導入した場合の交換関係も

\begin{align}

\{\hat{\psi}(\xi), \hat{\psi}^\dagger(\xi')\} \equiv \hat{\psi}(\xi) \hat{\psi}^\dagger(\xi') + \hat{\psi}^\dagger(\xi')\hat{\psi}(\xi) = \delta(\xi-\xi') \end{align}

となる。

演算子一般の表現はボゾンの場合と変わらず,例えば1粒子及び2粒子演算子は

\begin{align} \hat{F}^{(1)} =\int \hat{\psi}^\dagger(\xi ) \hat{f}^{(1)} \hat{\psi}(\xi) d\xi \end{align}

および

\begin{align} \hat{F}^{(2)} =\frac{1}{2}\int \hat{\psi}^\dagger(\xi )\hat{\psi}^\dagger(\xi' ) \hat{f}^{(2)} \hat{\psi}(\xi')\hat{\psi}(\xi) d\xi d\xi' \end{align}

と表される。


参考文献


自然科学に関する質問やノート作りは『AfterSchool』で。