確率分布と確率過程

Dr. SSS 2020/07/07 - 08:57:03 熱・統計力学
はじめに

ここでは,確率的な事象を扱うのための最も基本的な道具である確率変数と確率分布という概念について説明する。


keywords: 確率論, 分布関数, 確率過程

内容

確率変数と確率分布

確率変数(stochastic variable)(その他random variableあるいはaleatory variableとも呼ばれる)$X$は,可能な値の集合$\{x\}$と,それに関する確率分布(probability distribution)$P_X(x)$で定義される。 $P_X(x)dx$が$X\in(x,x+dx)$である確率を表す。 また,$P_X(x) \geq 0$であり

\begin{align} 1=\int dx P_X(x) \end{align}

と規格化される。 積分範囲は$X$の取りうる値の領域全体にわたっている。 $\{x\}$が離散的で,$\{ x_i \}=\{x_1,x_2,...,x_n \}$と表せる場合

\begin{align} \sum_i p_i= 1 \end{align}

を満たす係数$p_i$を用いて

\begin{align} P_X(x)=\sum_i p_i \delta(x-x_i) \end{align}

と構成することができる。 ここで$\delta$はデルタ関数である。 例として$X$を公平なサイコロの目として考えると,$\{x \}={1,2,3,4,5,6}$となり,$p_i$は$i=1,2,..,6$のすべてについて$1/6$となる。


平均とモーメント

$X$の関数$f(X)$の平均は

\begin{align} \langle f(X) \rangle =\int dx f(x)P_X(x) \end{align}

で与えられる。 特に,$f(X)=X^n$のとき,すなわち

\begin{align} m^n= \langle X^n \rangle = \int dx X^n P_X(x) \end{align}

を,$n$次のモーメント(moment)という。




同時確率と条件付確率

変数が

\begin{align} \bm{X}=(X_1,...,X_n) \end{align}

と複数ある場合

\begin{align} P_n(x_1,...,x_n) \end{align}

は,同時確率(simultaneous probability)あるいは結合確率(joint probability)と呼ばれ,$P_n(x_1,...,x_n)dx_1...dx_n $によって,各変数が$X_i \in (x_i,x_i+dx_i)$である確率が与えられる。

$n$変数の同時確率を$i+1$から$n$番目の変数について積分してしまえば,それらの値にかかわらず$1$から$i$番目の変数についての確率分布

\begin{align} P_i(x_1,...,x_i)=\int P_n(x_1,...,x_n)dx_{i+1}...dx_n \end{align}

が与えられる。 これを,$X_1,...,X_i$についての周辺分布(marginal distribution)という。

また

\begin{align} P_{n-i|i}(x_{i+1},...,x_n|x_1,...,x_i)=\frac{P_n(x_1,...,x_n)}{P_{n-i}(x_{i+1},...,x_n)} \end{align}

で定義される,$i+1$から$n$番目の変数を固定したときの$1$から$i$番目の変数についての確率分布を条件付き確率(conditional probability)と呼ぶ。


確率過程

確率変数が時間に依存するとき,それを確率過程(stochastic process)という。 $X(t_i)$が各時刻でそれぞれ$X_i \in(x_i, x_i+dx_i)$となる確率は

\begin{align} P_n(x_n,t_n; ...; x_1,t_1)dx_1...dx_n \end{align}

で表される。

$X_1, ...,X_i$を固定した際の,$X_{i+1} , ...,X_n$の同時確率,すなわち条件付確率を

\begin{align} P_{n-i|i}(x_n,t_n;...;x_{i+1},t_{i+1} | x_i, t_i ; ... ; x_1,t_1) \end{align}

と表す。 改めて,同時確率とは

\begin{align} P_{n-i|i}(x_n,t_n;...;x_{i+1},t_{i+1} | x_i ,t_i ; ... ; x_1,t_1) = \frac{P_n(x_n, t_n ; ... ; x_1,t_1)}{P_i (x_i,t_i ; ... ; x_1,t_1)} \end{align}

の関係にある。



参考文献


自然科学に関する質問やノート作りは『AfterSchool』で。