Stefan-Boltzmannの法則

Dr. SSS 2020/03/30 - 10:54:51 熱・統計力学
はじめに

理想化された物体である黒体による熱放射のスペクトルは,温度$T$のみで決まる。そして,この黒体による熱放射のエネルギーは温度の4乗に比例する。この後者の関係を,Stefan-Boltzmannの法則と呼ぶ。この法則は以下のようにして導かれる。


keywords: 統計力学, 放射, 熱力学, Planckの放射式

内容

Planck放射式の積分

黒体の放射スペクトルは,Planckの放射式

\begin{align} \label {eq:u} u_\nu(T) d\nu = \frac{8\pi \nu^2}{c^3} \frac{h\nu}{\exp{\left(\frac{h\nu}{k T}\right)}-1}d\nu \end{align}

によって与えられる。これは,振動数が$\nu$から$\nu+d\nu$の間にある体積当たりのエネルギー密度を表している。よって,これを全振動数領域にわたって積分したもの

\begin{align} u(T) = \int_0^\infty d\nu \frac{8\pi \nu^2}{c^3} \frac{h\nu}{\exp{\left(\frac{h\nu}{k T}\right)}-1} \end{align}

が,全エネルギー密度を与える。

この積分を実行するために,まず$x\equiv h\nu/(kT)$を使って変数変換すると

\begin{align} u(T) = \frac{8\pi}{c^3h^3}k^4 T^4 \int_0^\infty dx \frac{x^3}{e^x-1} \end{align}

となる。 右辺の積分は,以下で説明するように,$\pi^4/15$と与えられる。 よって,全エネルギー密度として

\begin{align} \label {eq:SB_law} u(T) = a T^4 \end{align}

が得られる。 ここで

\begin{align} a=\frac{8\pi^5 k^4}{15c^3h^3} = 7.56\times 10^{-16} \ {\rm Jm}^{-3}{\rm K}^{-4} \end{align}

放射密度定数(radiation density constant)と呼ばれ,別の有用な定数であるStefan-Boltzmann定数

\begin{align} \label {eq:sigma} \sigma = \frac{2\pi^5 k^4}{15c^2h^3} = 5.67\times 10^{-8} \ {\rm Wm}^{-2}{\rm K}^{-4} \end{align}

と,$a=(4/c)\sigma$の関係にある。 改めて,熱放射のエネルギー(密度)が温度の4乗に比例するこの関係をStefan-Boltzmannの法則という。




放射式の積分と$\zeta$関数

積分

\begin{align} \label {ex3} \int_0^\infty \frac{x^3}{e^x-1}dx \end{align}

を評価する。 まず(\ref{ex3})を

\begin{align} \int_0^\infty \frac{x^3e^{-x}}{1-e^{-x}}dx \end{align}

と変形する。 被積分関数の分母部分

\begin{align} \frac{1}{1-e^{-x}} \end{align}

は,初項$1$,等比$e^{-x}$の無限等比級数の和であるから,積分全体を

\begin{align} \notag \int_0^\infty & x^3e^{-x} \left( 1 + e^{-x} + e^{-2x} + ...\right) dx \\ \notag &= \int_0^\infty x^3e^{-x} \sum_{n=0}^\infty e^{-nx}dx \\ &= \int_0^\infty x^3\sum_{n=1}^\infty e^{-nx}dx \end{align}

と変形できる。

この積分は,部分積分を繰り返すことで

\begin{align} 3! \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^4} \end{align}

と計算できる。 この和は

\begin{align} \zeta(s) \equiv \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^s} \end{align}

で定義されるRiemannの$\zeta$関数で$s=4$としたものであり,$\zeta(4)=\pi^4/90$と計算される。 よって最終的に(\ref{ex3})は

\begin{align} \int_0^\infty \frac{x^3}{e^x-1}dx = \frac{\pi^4}{15} \end{align}

と求まる。



参考文献


自然科学に関する質問やノート作りは『AfterSchool』で。