マスター方程式

ScienceTime Team
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マスター方程式

Introduction

ここでは,Markov過程の確率分布の時間発展を記述するマスター方程式について説明する。

二状態系

まず簡単のために,それぞれ12とラベルされる二種類の状態しかとらない系を考えよう。 この系では,微小な時間dt後に系が状態1を取る確率は時刻tにおける確率を用いて

(1)P1(t+dt)=P1(t)×(状態1にとどまる確率)+P2(t)×(状態2から1に移る確率)

と表せる。

単位時間あたりに状態1から2に飛び移る遷移確率をW12とし,これが時間に独立であるとすれば,(1)と同じものを

(2)P1(t+dt)=P1(t)(1W12dt)+P2(t)W21dt+O(dt2)

と表すことができる。 最後の項はdtの間に1から2に移り,また1に戻る,あるいはそれを複数回繰り返す確率から来るが,並び変えをしてdt0の極限を取ることでこれらの寄与は消え,微分方程式

(3)dP1(t)dt=W12P1(t)+W21P2(t)

が得られる。 P2(t)についても同様にして

(4)dP2(t)dt=W21P2(t)+W12P1(t)

が得られる。 (3)および(4)が,この二状態系のマスター方程式である。 この式の意味は,改めて(1)あるいは(2)より明らかだろう。

(3)と(4)を足し合わせると

(5)dP1(t)dt+dP2(t)dt=ddt(P1(t)+P2(t))=0

となり,確率保存も確認できる。

一般化

任意の数の状態を取りうるケースにおいて,二状態のケースの(2)に対応するのは

(6)Pi(t+dt)=Pi(t)(1jiWijdt )+jiPj(t)Wjidt+O(dt2)

である。 2状態系の場合と同じようにしてこの式の極限をとることで,一般のマスター方程式

(7)dPi(t)dt=ji[WjiPj(t)WijPi(t)]

が得られる。

また,状態が連続変数xで表される場合は,和を積分に置き換え

(8)P(x,t)t=dx[W(x|x)P(x,t)W(x|x)P(x,t)]

となる。